TPPの米議会での承認が難航するなか、日本の安倍晋三首相は国内での手続きを急いでいる。これは安倍政権がTPPを「アベノミクス」の3本の矢の一つである「経済成長戦略」の重要な推進力として位置づけているからだ。安倍政権はTPP参加により輸出を拡大し、日本の製造業(特に日本経済の支柱である自動車産業)に利益をもたらすことができると考えている。またTPP参加により外国製品が割安になり、一般人にとって魅力的だ。
内閣官房は2013年に、次のような計算をしたことがある。TPP発効から10年後、日本の国内総生産(GDP)が3兆2000億円増加するというのだ。日本政府はTPPが貿易・投資を促進し、人口減と高齢化により停滞する日本経済の力強い成長を促すことに期待していた。
しかしトランプ氏が次期米大統領に選出されたことで、TPPの先行きが不透明になった。報道によると、TPPの発効は次の2つの条件のうち1つを満たさなければならない。まず12カ国が協定署名から2年内に国内手続きを終える、次に6カ国以上が批准手続きを終えGDPが12カ国全体の85%を占める。データによると、米国のGDPは12カ国の60.4%、日本は17.7%を占めている。つまり米日のどちらかが不在であれば、TPPが正式に発効することはない。
第一生命経済研究所の永濱利廣エコノミストは、TPPが発効しなければ日本に想像もできない損失をもたらすと指摘した。まずTPP参加で日本が得る経済的利益の大半が得られなくなる。次に米国は経済協力協定に署名している国にしかシェールガスを輸出しないが、米国がTPPから退けば日本は安価なエネルギーを得にくくなる。
安倍首相は11日の参議院本会議で、日本はすべてのチャンスをつかみ、米国とその他の参加国に国内手続きを早急に完了させるよう促すべきだと表明した。安倍首相はさらに17日にトランプ氏と会談し、TPPの重要性について説明する予定だ。
安倍首相は14日の参議院の特別委員会で、「トランプ氏が選出されたことで、TPP発効が厳しくなったことを認識しており、率直に認める。ただしこれは終わりを意味しない。米国が政権交代の時期を迎えるなか、日本がTPPの早期発効を主導する必要がある」と述べた。菅義偉官房長官も14日の記者会見で、日本政府のTPP推進方針に変化はないと表明した。
TPPの今後について悲観的な態度の専門家は、TPPがすでに流産したと見ている。別の専門家はTPPの条項を改正し、米国が離脱した後も発効できるようにすべきと提案している。
富士通総研経済研究所主席研究員の金堅敏氏は、楽観的だ。「トランプ氏の多くの政策、例えば貿易保護主義を推進するか、どの程度保護するかについては、今後の経過を見守る必要がある。トランプ氏は米国経済を復興させようとしているが、そのためには世界の資源、技術、市場、人材を活用しなければならない。そのため徹底的な貿易保護を推進する可能性はない」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2016年11月15日