新海誠監督のアニメ映画「君の名は。」(中国語タイトル:「你的名字。」)が先週金曜日、中国本土で公開された。初日の興行収入は7750万元と、「STAND BY ME ドラえもん」が持つ中国上映の日本映画としての最高記録(2780万元)を178%上回った。公開2日目となった土曜日の興行収入は1億1900万元、日曜日は9000万元だった。
「君の名は。」はもともと、中国市場での大ヒット条件に合っていない。まずこのアニメは、リズムが明快でなく、笑いに満ちてもなく、ビジュアル的に強烈なハリウッドアニメでもない、さわやかな愛情の物語で、基本的に大きな見どころがなく、スーパースターが登場するわけでもない。また、日本の映画は今世紀に入って勢いを欠き、中国市場で人気の韓国映画に後れを取っている。さらに、この映画はオリジナル作品で、中国の1980年代生まれが良く知っているドラえもん、ちびまる子ちゃん、ワンピース、名探偵コナンなどの人気タイトルでもない上、こうした人気タイトルも中国劇場版の興行成績は一般的な水準にとどまっていた。これらを踏まえると、「君の名は。」が先週末に見せた突出したパフォーマンスは想像のつかないものだった。
一方、マーケティング面に目を向けると、このアニメが大ヒットする必然性が理解できる。
日本のアニメ愛好家はもともとマイナーな存在だったが、どうすればマイナーからメジャーに変わるのか?それにはまず、若い女性を感動させる必要がある。現在の映画市場では若年鑑賞者、特に若い女性が重要な存在で、彼女たちは流行と個性を追い求め、ロマンや幸福を渇望している。「君の名は。」のなかで展開される愛情と心の動きは、まさに彼女たちのこうした心理に合うものだ。
上映前に中国側サプライヤーの光線伝媒と新海誠監督が始めた「フィルター宣伝」がソーシャルネットワークで拡散した。手を少し使うだけで自分の写真に新海誠風のさわやかなぼかしを加えることができるというフィルター効果が、ソーシャルネットワーク上で友達から友達へと伝わり、すぐに多くの人が「君の名は。」のタイトルも覚えた。この映画を知らない人はソーシャルネットワーク上にいないのではないかと言うほど、口コミの威力はすごかった。
中国最大の若者流行文化娯楽サイト『ビリビリ動画』は、「君の名は。」を宣伝する急先鋒となり、新海誠の忠実なファンとして応援団を務めるだけでなく、お金も出して12月3日に万達映画館465カ所で計11万席を確保した。映画の興行収入をもたらした上に、ファン拡大に効果を上げた。
今作最大の目玉となった新海誠監督の訪中は、映画ファンの熱意を掻き立てて鑑賞欲を刺激し、口コミをさらに広げる非常に効果的なものだった。新海誠監督は誠実、控えめ、気さくなで、ファンを感動させ、喜ばせ、多くの人から高い評価と尊敬を受ける人物だ。
上映時期を選ぶのにもテクニックを要する。「ドクター・ストレンジ」や「ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅」というハリウッド大作の影響を避けながら、「長城」、「羅曼蒂克消亡史」という中国の2大タイトルよりも2週間早く公開し、この半月で軽快にリードを広げる。中国の2大タイトルが上映されても差別化が図れるため、「君の名は。」は腰折れすることなく、12月中はすばらしい興行成績を上げる可能性が高い。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月10日