現代の日本人は南京大虐殺の歴史をどう捉えているのだろうか。筆者は、「侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館」(南京大虐殺紀念館)の元館長として、南京大虐殺史と中日関係、平和学の研究に20年余りにわたって従事して来た。現在、日本の平和友好団体の招きを受け、12月2日から16日までの日程で、日本の熊本、長崎、福岡、広島、岡山、大阪、神戸、名古屋をすでに訪れ、さらに金沢、東京を引き続き訪問する予定となっている。各地では、日本社会各界の人々と幅広く交流し、南京大虐殺の歴史について11回に及ぶ講演を行い、南京大虐殺の歴史に対する現代日本人のさまざまな態度をこの身で経験した。
日本中国友好協会や日中協会などの中日友好組織の日本各地の分会、日本南京大虐殺60カ年全国連絡会、平和を考える市民の会など多くの民間組織は、南京大虐殺の真実の伝播と交流に長年にわたって熱心に取り組んできた。1994年からは、南京大虐殺の生存者を日本各地に招いて証言を聞く集会が21年連続で開かれ、生存者らは、南京大虐殺の被害の史実を語り、中国を侵略した旧日本軍の暴行を告発した。南京大虐殺の生存者が高齢となっているために、今年は集会に生存者を招くことはできなかった。だが京都や大阪、神戸などの地の平和友好組織は、夏瑞栄さんや侯占清さんなどの生存者の証言映像を放映した。広島の集会では、在日韓国人の朴曜子さんが喪服を身に着け、慰霊の舞いを踊った。京都の証言会では日本の若者がピアノで『平和の歌』を演奏した。神戸では参加者がそろって『平和の花 紫金草』を歌った。歴史と平和とをしっかりと結びつけて考え、伝えようとしている日本人は少なくない。だが南京大虐殺の歴史に無関心な日本人も多い。長崎の中学校の女性教師の奥山忍さんによると、右翼勢力の出版した『大東亜戦争の総括』を読んで、南京大虐殺は起こらなかったのではないかと考える生徒もいる。日本の若者のこうした状況は、正直で良識を持った日本人を深く憂慮させている。
南京大虐殺の歴史に対する現代日本人の態度は矛盾をはらみ、複雑なものである。『産経新聞』の10月15日付の報道によると、日本政府は、南京大虐殺が記憶遺産に登録されたことに不満を示し、国連教育科学文化機関(UNESCO)に再度抗議した。中国が南京大虐殺の国家追悼を行っていることに対し、一部の日本人は理解と賛同を示すが、一部の日本人は反日の行動だとみなしている。日本各地の民間組織が次々と、南京大虐殺の証言を聞く会や南京大虐殺の歴史映像の放映会を行っている一方、日本の政府とメディアはこの歴史の惨劇に対して集団で沈黙を保っている。
日本で筆者は、憂慮すべき新たな動向にも気付いた。一部の日本人は、侵略戦争や南京大虐殺などの加害者としての歴史を認めないどころか、第2次大戦中の被害者としての歴史を振り返ることも避けようとしている。さらには自分の子どもが広島や長崎の原爆資料館を参観することにさえも反対する。彼らは戦後の歴史に注目することに熱心で、日本の世界平和に対する貢献を強調する。こうした偏った教育の動機は、隣国の警戒と憂慮を引き起こさざるを得ないものだ。(文:朱成山・侵華日軍南京大屠殺遇難同胞紀念館元館長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月15日