安倍首相は年末、深い焦燥に陥っている。日本と利益面で深いつながりを持つ3大国との関係に、障害が存在するからだ。
トランプ時代の米日同盟関係には不確定要素がある。TPPが終了となる見通しで、日本が縮小版TPPを支えられるかは未知数だ。中日関係は歴史問題と現実的なもつれにより、短期間内の改善が困難だ。ロシアと日本には、北方四島の主権問題が残されている。
安倍首相を少しだけほっとさせているのは、ロシアのプーチン大統領が訪日を開始しようとしていることだ。プーチン大統領は今回、大規模な経済貿易団体を率いる。これは日露関係のビッグニュースだ。プーチン大統領の訪日で、両国関係が大きく改善することはあるだろうか。その結果はおそらく、安倍首相を満足させないだろう。安倍首相はプーチン大統領が北方四島の主権問題で態度を軟化させることを願っており、実質的な収穫を手にしようとしている。しかしプーチン大統領の今回の訪日には、別の目的がある。
この別の利益を求める外交活動において、安倍首相は失望し、幻想を抱くだろう。プーチン大統領は、ポイントを得る可能性がある。
プーチン大統領の訪日前、安倍首相は南クリル諸島の元住民の代表者と会談した際に、北方四島の返還は終生の目標だと強調した。安倍首相はこの目標を、精力が充実している間に実現しようとしている。今年5月にソチで開催された日露首脳会談で、安倍首相は北方四島の「新アプローチ」を打ち出した。これはロシアが二島(歯舞諸島、色丹島)を返還した上で、両国が国後と択捉の二島を共同管理するということだ。また日本は北方四島、もしくは歯舞、色丹、国後の三島を共同支配の対象とする案を持つ。
二島返還は、何も新しい案ではない。1956年の日ソ共同宣言で、これはすでに提示されていた。しかし野心あふれる安倍首相はさらに多くのものを手にしようとしている。北方四島のすべての主権を手にできなくても、大きな進展を実現しようとしている。島嶼問題で主権と管轄権を切り離す日本の手法も、自国の利益を守る手段だ。
安倍首相の計算とプーチン大統領の計算が重なれば、ハッピーエンドではなく新たな駆け引きが開始される。