トランプ次期米大統領は連日、新たな政治の波を立てている。トランプ氏は中米関係で「火遊び」を続け、慣例を破り台湾当局の指導者と直接電話会談し、さらには「一つの中国」という中米外交の最低原則を放棄すると脅し、国際社会を震撼させている。しかしながらこの騒動の中には、日本の安倍晋三首相の見慣れた姿がない。
間もなく終わる2016年、安倍首相は米国のアジア太平洋リバランス戦略に追随し、中国けん制のために駆けずり回り、気力と体力を使い尽くした。中米の駆け引き、例えばTHAADの韓国配備、南中国海の仲裁といった問題において、日本は存在感をアピールし、米国のお株を奪うほどだった。そのためこれまでの慣例を見ると、今回の中米の一悶着は、安倍首相が「芝居」を打つ大舞台であるはずだ。
しかし人々が固唾を呑んで見守るなか、日本の外交は同問題で長時間に渡り沈黙を維持している。安倍首相と閣僚らは日露首脳会談や月末のハワイ訪問に専念し、本件を完全に忘れているかのようだ。このような異常な現象が生じている原因については、次の3点から説明できる。
まず、トランプ氏の一連の発言は中米外交の最低ラインを脅かしており、安倍首相は自ら災いを招くのを避けようとしている。
王毅外交部長は、トランプ氏の「一つの中国」原則に関する発言について、「一つの中国という原則は中米の外交の基盤であり、台湾問題は中国の核心的利益に関わる。この最低ラインを脅かそうとすれば、中国は必然的に未曾有の反撃を行う」と述べた。安倍内閣で外務副大臣を務めた自民党幹部の中山泰秀氏は11日、トランプ氏が台湾に善意を示したことで中国から報復された場合も、日本は米国の政策に追随し、台湾と軍事協力を行う可能性もあると認めた。しかしながら日本は中国の近隣国でもある。これは中米両国の駆け引きが対抗、さらには衝突に発展した場合に、肩入れをした日本が最も先に中国の怒りにさらされる可能性を意味してもいる。安倍首相の対中外交は、改憲を目的としている。中国の邪魔をし、外交の手段により国際社会で攻撃を加え、中国が容認できる範囲内で台頭をけん制する。その一方で、自ら吹聴する中国脅威論の証拠を手にする。トランプ氏の台湾に関する発言は、中国の我慢の限界を超えている。これは日本政府が望まぬことであり、そこで安倍首相は回避する態度をとっている。