次に、TPP問題でトランプ氏にはねつけられ、安倍首相は今も警戒心を抱いている。
トランプ氏がヒラリー氏に勝利するとは、日本政府の想定外だった。安倍首相は自ら「一般人」のトランプ氏を訪問せざるを得なくなった。この人と国の品格を貶める行為はオバマ大統領の不興を買い、またそれほど大きな効果を発揮していない。安倍首相の訪問目的はTPPという計画を放棄しないよう説得することだった。日本はTPPのために、すでに巨額の支出を強いられているからだ。これが失敗すれば、アベノミクスと政権運営の基盤が強い疑問にさらされる。しかし安倍首相とトランプ氏の会談の効果は理想的でなかった。日本の首相が去ったばかりで、トランプ氏は就任後まずTPP離脱に取り組むと再度表明し、日本政府にきまりの悪い思いをさせた。国会で野党から「トランプ氏が信頼に足る理由は何か」と質問された際に、安倍首相は仕方なく「トランプ氏が信頼に値すると感じている」と空虚で奇妙な回答をした。トランプ氏が今回再び事を構え、安倍首相は警戒心を強め、一定の距離を保っている。
それから、米国国内の反対意見により、日本が本件で騒ぎ立てる余地がなくなっている。
トランプ氏の台湾に関する発言は、その政権、特に共和党内の親台勢力の唆しを受けている。またトランプ氏はビジネス界出身で、相手をゆすることを得意としており、その投機的な性格とも関係している。しかし中米関係は重大事で、トランプ氏が「火遊び」をすると、ホワイトハウスと米メディアが疑問と批判の声をあげた。外交の常識が不足しており、中米の国交樹立から40年近くに渡り、多くの心血を注ぎ信頼により構築した暗黙の了解を無視しているというのだ。台湾メディアも、トランプ氏の関連する発言に気を良くしていない。各メディアは社説で、トランプ氏が「一つの中国」という原則を、中国と駆け引きする駒にすることを懸念している。中国が十分な条件を提示すれば、台湾も「商品」として売り渡されるのではないか、ということだ。トランプ氏も強い圧力を受け、態度を和らげている。トランプ氏の断固たる支持者、ギングリッチ元下院議長は、米国はこれまで通り台湾海峡の現状を支持すると説明した。主役がすでに引き下がろうとしており、脇役の安倍首相も自明の理があれば、軽率に行動することはないだろう。
トランプ氏の就任が、未来の世界発展の不確定性を高めることを認識しなければならない。この不確定性を前にし、多くの国が一時的に歩みを止め、静観を開始している。特に日米同盟を外交の礎とする日本にとって、米国の重大な政変は、安倍政権の外交を強く妨げている。今回の件を通じて、少なくともトランプ氏の正式な就任から一定期間に渡り、日本政府が軽率に揉め事を起こすことはなく、東アジア情勢が一時的に穏やかになると予想できる。(筆者:孟明銘 中国社会科学院日本研究所ポストドクター)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2016年12月19日