日本の防衛省が敵のレーダーや通信を妨害する電子戦の強化に向け、態勢整備に本格着手することが31日に明らかになった。2022年度にも航空自衛隊岐阜基地で新たな電子戦評価システムの運用を開始し、陸海空自の電子戦装備に反映する。中国、ロシアが電子戦能力の構築を急速に進めており、米軍は優位性確保に危機感を持っている。自衛隊はこの分野で出遅れていることから、最新施設の導入で巻き返しを図ろうとしている。1日付産経新聞が伝えた。
電子戦評価システムは防衛装備庁が開発するもので、密閉された施設内で戦闘機が電波を出し、敵レーダーを標的とした妨害効果を試験する。妨害電波を無力化する性能もテストする。空自戦闘機のほか、防空システムや艦艇などのレーダーや通信機器の性能評価にも活用。
防衛省は近く評価装置の研究試作に着手し、2021年度から装置の試験を行う。早ければ2022年度にも運用を開始し、2024年度末までのシステム完成を目指す。2016年度第3次補正予算案に開発費62億円を計上している。
現代戦ではネットワーク化が進み、敵の通信機器やレーダーを妨害する電子戦の重要性が高まっている。防衛装備庁関係者は「電子戦が勝敗を決する」と話す。最近では、自衛隊が妨害しにくい周波数を使ったレーダーを搭載した、中国軍機の運用が確認されているという。
電子戦能力強化のためには、レーダーや通信機材の性能を試験する施設が必要だが、空自電子戦技術隊が保有するシステムは旧式化が進み、最新の電子戦を反映した性能試験に対応できなくなっている。また通信機器のテストも実施できない。
電子戦能力は機密設備の塊で、米中露など主要各国が技術開発にしのぎを削る。米政府は秘密保護の観点から、同盟国である日本への協力にも消極的で、防衛省は新たなシステムを国産で開発する。
米国内では、米軍がステルス技術の発達などを背景に、電子戦分野で十分な投資を行っていなかったとの批判がある。米シンクタンク「戦略予算評価センター(CSBA)」は昨年末に発表した報告書で、「中国やロシアなどが、米軍が依存するセンサーや通信ネットワークの脆弱性を標的とするシステムを構築中」と警鐘を鳴らした。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年1月4日