新たな挑戦に立ち向かう「生みの苦しみ」の時代 全人代「政府活動報告」に思う=高見澤学

新たな挑戦に立ち向かう「生みの苦しみ」の時代 全人代「政府活動報告」に思う=高見澤学。

タグ: 高見澤学 政府活動報告

発信時間: 2017-03-07 09:54:18 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

日中経済協会

調査部長 高見澤学

3月5日から第12期全国人民代表大会第5回会議が始まった。本会議の初日には、恒例により李克強国務院総理から「政府活動報告」が発表された。

2016年は、世界的に欧米諸国を中心として反グローバリズムや保護貿易主義の傾向が高まり、これまでのグローバル化の流れとは逆行する動きがみられている。一方、中国国内では過剰設備・過剰債務等の構造的問題を抱えており、徐々に改善の方向に向かいつつも、依然として解決困難な課題が存在している。このように混迷を深める国内外の複雑な経済環境の中で、中国政府は国内経済の安定に努めなければならない重要な使命を担っていたと言えよう。

マクロ、ミクロにわたって数々の政策・措置を実施することで、結果として中国が6.7%の経済成長を実現したことは現政権の一つの大きな成果であり、苦労の賜物である。広大な国土、膨大な人口を有し、多民族を抱える中国を国家として一つにまとめ上げ、構造改革を進めつつ一定の経済成長を達成することは並大抵なことではない。正直言って、頭の下がる思いである。

翻って2017年の経済活動はどうなるだろう。「政府活動報告」の今年度の活動計画をみると、今年は秋に予定されている中国共産党第19回全国大会の開催を踏まえ、党と国の事業の発展に重要な意義をもつ年であるとし、新たな発展理念を確立して、経済発展の「新常態(ニューノーマル)」に適応して、調和・安定した経済・社会を維持しなければならないとしている。

ここで特に重要なのは、新常態にどう対応していくかであろう。この新常態の大きな特徴は、「融合」に集約されているのではないだろうか。経済政策ではマクロとミクロの融合、産業では性格の異なる産業同士の融合、地理的にはより広範な地域の融合などである。経済のグローバル化が進み、経済的には国境という概念が薄れ、経済規模の拡大により産業チェーンはより複雑に絡み合って連動し、通信情報技術の発展に伴いバーチャルと実体経済の空間的・時間的垣根を越えたつながりが生まれている。もはや単一の業種内の調整で問題を解決できる時代は終わりを告げたと言えよう。

従来の経済政策は、欧米で形成されてきた経済理論の下、先進国の先行事例を参考に、それぞれの国の実情に合わせて、後発優位性を活かした独自の発展モデルを創り上げればよかった。第1次産業から第2次産業へ、第2次産業の中でも軽工業から素材産業へ、素材産業から設備製造業へ、そして第2次産業から第3次産業へと、先進諸国は産業構造の転換を図り、科学技術の進歩と相まって、より高度化・効率化した社会へと進化を遂げてきたことは、世界の歴史を振り返ればよく分かることだ。しかし、第3次産業から第4次産業革命が起ろうとしている現在、現状に合わせた発展モデルを創り出すことは容易ではない。通信・情報技術の進歩による情報化社会の到来は、これまで誰もが経験し得なかった世界を生み出し、きわめて高度な想像力を以て創造する必要があるからだ。このことは中国に限られたことではない。地球人類に共通した課題なのである。

中国政府は、2017年の経済成長率の目標を6.5%前後として成長の速度を若干緩めた形となったが、積極的な財政政策と穏健な金融政策により一定の経済成長を維持した上で、イノベーションや対外開放等を通じて構造調整を進めるという従来の経済政策の基本姿勢は変わっていない。そこにはこれまでの経験や知識を活かしつつ、新たな挑戦に立ち向かおうとする意識の表れではないかとも考えられる。

しかし、新たな挑戦だけにやるべきことは無限に存在する。今回の「政府活動報告」では、重点活動任務として改革の深化や内需の掘り起し、イノベーションによる実体経済の高度化、農業の安定的発展、対外開放の拡大、生態環境保護の強化など9項目を挙げている。任務を遂行する過程において新たな課題が生じてくるだろう。今、まさに「生みの苦しみ」の時代を迎えているのかもしれない。生んだ後の幸せのために。

 

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