誰が日本のために「火中の栗を拾う」のか?
上記の数々により、日本が南中国海の「代理人」探しに、投資をしていないとは言えない。しかし、このような政策は失敗することが決まっている。何故なら日本のために「火中の栗を拾う」国はどこにもないからだ。
歴史的な理由と現実的な理由によって東南アジアの国々は日本と比較的親しい間柄にあるが、これはおかしなことではない。しかし、近年日本が躍起になっている「能力育成」支援の背景にある企みを、受益国は言わないだけでおそらく知っている。これらの国は物をもらう際には自然に「笑って受け取る」ことができるが、いったん日本に強引に「推し進め」られれば反発する。
その典型的な例がやはりフィリピンだ。16年7月に新政権が誕生してからというもの、フィリピンは外交において明確な変化を見せ、割に理性的な実際の行動をとっている。これはドゥテルテ大統領個人の性格によるものもあるが、フィリピンの外交政策の「振り子を戻す」客観的な要望によるものもある。つまり、フィリピン国内の理性的な国民は中国に対抗するアキノ前大統領の路線を走っていた場合、どのような局面を迎えるのか知っていたのだ。
このような状況はフィリピンだけではない。半世紀近い歴史の中で東南アジアの国々は外交面で長期的な「一辺倒」になる状況はほとんど現れなかった。常に「短い周期」で右往左往していたが、長期的に見れば割に明確な独立性を持っていた。東南アジアの国々の立場になって考えると、これもバランスと安定を維持する身の振り方である。
しかし日本の「代理人」探しの企ては東南アジア諸国の外交政策の長期的な特徴を無視しているばかりか、さらに重要な現実である、中国とASEANの関係の変化も無視している。1990年代から中国とASEANの政治経済協力は急速に進展してきた。「中国–ASEAN 自由貿易地域」(CAFTA)の形成や、中国とASEAN諸国の二国間経済貿易協力はいずれもASEAN諸国に確実なメリットをもたらし、世界における地域経済協力のモデルとなった。
ASEANのいかなる国が、日本の南中国海かく乱の道具となるか、それとも中国とともに地域の発展がもたらす利益を受けるか、これらの利害を考慮すれば結果は明らかだ。特定の期間や議題で南中国海地域の一部の当事国は「日本に利用される」形で「日本を利用する」かもしれないが、日本に長期的に利用されることは決してない。
諦めの悪い「代理人」がいなければ、日本の間接的な干渉政策の思い通りの支えを見つけることは大変難しい。現在の日本の南中国海政策にはいかなる「勝算」もない。
意見に固執したままでは「袋小路」に追い詰められるだけ