トランプ氏が大統領選のブラックホースになり、当選した。これは米国人の社会への不満を示していると言えよう。多くの企業が他国にシフトしており、米国内では製造業の低迷、失業者の増加、貧富の差の拡大といった問題が生じている。
トランプ大統領は就任後、TPP離脱を決定した。これは「トランプ時代」の米国が、多国間経済協力の枠組みから離脱し、保護主義に回帰する可能性が高いことを意味している。またトランプ氏は「米国ファースト」を基本方針としている。
米国は当初、グローバル化の積極的な支持者だったが、今や失意の底に陥っている。これはグローバル化のパラドックスだ。米中両国が間もなく開く首脳会談で、経済とグローバル化が避けては通れない話題になる。
TPPから離脱したのは、安価な労働力の殺到を阻止すると同時に、製造業の米国回帰を促し、米国の経済成長と雇用拡大を促進するためだ。この試みは、短期的に一定の効果を発揮するだろう。またトランプ大統領のこの経済政策は、中米間の貿易格差という問題への対応でもある。米国の対中貿易赤字は2016年に3470億ドルに上り、米国の貿易赤字の半分以上を占めた。
しかし長期的に見ると、米国が保護主義を続ければ、自国の国際貿易の発展を損ね、最終的に深く害を受けることになるだろう。米国が保護主義を取れば、貿易相手国もこれに対策を講じる。最終的に米国は自ら築いた壁に苦しみ、経済がさらに低迷する可能性がある。
中国にとって、現在の米国との関係には困難な点が多いが、このような局面はチャンスとも言える。米国の保護主義が、中国の対米輸出額に影響を及ぼすことになるが、米国の世界貿易からの撤退により、他国は活路を見出すことになる。つまり、米国の国際的な影響力が低下する。この状況下、中国はグローバル化の「旗手」になり、他国との経済協力を全面的に推進できる。これは得難いチャンスだ。
中国には現在、主に次のような考えがある。まず、日米同盟に対して強い警戒を維持している。次に、中国は「2つの百年」計画の実現を優先する。そのため習近平国家主席の訪米には、主に次の3つの目的が含まれる。
(一)米国に中国の実力と重要性をアピールし、これを踏まえた上で重大な核心的問題をめぐり意見交換し、共通認識を形成する。具体的に言うと、中国の発展は米国の実力への挑戦ではなく、米国経済の発展をある程度支援できると伝える。しかもこの支援は、実質的なものだ。
(二)中国の発展が米国経済をけん引することを強調し、トランプ政権との距離を縮める。トランプ大統領はこの提案を受け入れるだろう。
(三)中国は米国と、国際社会における協力を模索する。これには世界範囲のテロ対策の協力などが含まれる。習主席は先ほど、トランプ大統領に宛てた書簡の中で、「(米国と)建設的な関係を構築したい」と明記している。
軍事・安全について、米国は中国を強いライバルと見なし続けるだろう。そのため日米同盟の強化は、米国にとって不可欠だ。日米両国は今後、戦略的な協力関係をさらに強化するだろう。国家安全保障の基盤を固めるため、日本が米国との同盟を強化すると予想できる。
しかし日本も米国一辺倒の政策を完全に認めているわけではない。日本は今後、これまでのTPP一本の政策を変え、FTA(RCEP、中日韓FTAなど)を推進し、社会福祉を促進し、環境汚染や高齢化問題に対応しなければならない。これらの面で、中日は協力を強化できる。これは二国間関係の改善の突破口になるはずだ。(筆者:天児慧早稲田大学教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年4月5日