日本の安倍晋三首相は、来月北京で開かれる「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに自民党の二階俊博幹事長を派遣し、習近平国家主席に親書を届けることで、中日関係改善の意向を示すことを決定した。安倍内閣はこれまで、中国が初めて提案した一帯一路(シルクロード経済ベルト、21世紀海上シルクロード)とアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対して、反対もしくは静観の態度を見せていた。ところが今や急に注目を強め、重鎮の二階幹事長をフォーラムに派遣することを決定し、異常とも言える事態となっている。
安倍首相はこれまで言行不一致だった。聞こえのいいことを言うが、不穏な動きを続け、誠意があり信頼できるとは言いがたい。しかし今回はこれまでと異なっている。主観的に願っているわけではないとしても、安倍首相は本当に対中政策を調整する可能性がある。これは客観的な情勢に迫られてのことだ。安倍首相が対中政策の調整を迫られたことには、主に次のような背景がある。
(一)中国経済・社会の発展が好転を続けている。世界では以前、中国経済の衰退を唱える声が上がっており、日本メディアは特にその傾向が強かった。しかし今や中国経済の「新常態」(ニューノーマル)の大きな成果が上がっている。特に今年第1四半期には予想以上のデータが記録された。日本経済も利益を手にし、対中輸出が約20%も増加した。同時に中国政府は汚職撲滅に力を入れており、国民生活の改善が続いている。中国の世界への影響力も拡大を続けている。これらは安倍政権が直視せざるを得ない現実だ。
(二)日米同盟で中国に圧力をかけることができなかった。安倍首相と日本の主流メディアは、日米安保条約の強化とTPPにより中国に圧力をかけると、宣伝に全力を注いでいた。しかしトランプ政権が発足すると、米国はTPP離脱を宣言した。中米首脳会談後には、中米の戦略的意思疎通も可能になった。米国は米日安保条約をただ戦術的に利用するだけであり、安倍首相は対米・対中の間でバランスをとる外交戦略を検討せざるを得なくなった。
(三)中国をけん制する包囲網が空振りに終わった。安倍内閣のいわゆる「価値観外交」は、米国の対中強硬派のオフショア戦略に積極的に協力していた。つまり日米が出兵せず、中国周辺諸国に挑発をそそのかしたのだ。日本は中国と周辺諸国の分断に全力を注いだ。その範囲は広く、インド、ASEAN諸国、韓国、ロシアなどが含まれた。特に中国と南中国海問題で係争が存在するベトナムやフィリピンなどには力を入れたが、いずれも失敗に終わった。
(四)一帯一路とAIIBが広く支持されている。安倍首相も日本のその他の政治家、さらには多くの識者でさえ優越感を持ち、日本がアジアナンバーワンだと考えている。そのため中国が提案した一帯一路とAIIBを心理的に受け入れがたく、当初は阻害しようとし、後に静観の態度を決め込んだ。今や中国の影響力が拡大を続け、米国にさえ動きが見られるようになった。日本がこれ以上真剣に向き合わなければ、非常に受動的な局面に陥る恐れがある。
(五)日本メディアが「自主外交」に傾き始めた。日本メディアは近年、関連国と連携し中国の台頭への圧力を強めることを強調していた。しかし今や、中日関係を改善し、中米間の架け橋としての力を発揮するという声が、日本国内で大きくなっている。例えば日本経済新聞は「トランプショックの攻撃の対象は日本と中国だ。これは中日が手をつなぐ千載一遇の好機だ。日本は裏をかき、中日関係の改善を進めるべきだ」と主張した。
(六)朝鮮半島の緊張情勢は、日本の対中政策に調整の機会を与えた。安倍政権はこれまで長期に渡り、「中国脅威論」を誇張することで右傾化政策を推進してきた。これにより対中政策を調整できなかった。しかし今や半島情勢が緊張し、日本国内の多くの人が、米国が軍事的手段を行使することで、日本が真っ先に反撃の対象になることを懸念している。そこで日本メディアは、中国との協力により朝鮮半島の戦争を回避し、対話により半島の緊張を和らげるべきとしている。これは安倍政権の対中政策に調整の機会をもたらした。
安倍首相の5年弱に渡る右傾化政策により、中日関係が大きく損なわれた。日本政府は情勢に迫られ調整に取り組んでいるが、安倍首相の政治思想が変わることはない。安倍政権に大きな流れを見極めるよう注意を促し続けると同時に、現在のチャンスを利用し、日本の民間の力を通じ中日関係を好転させるよう働きかけるべきだ。こうすれば積極的な効果を得られるかもしれない。中日両国の識者が相互協力し、このような取り組みを行うべきだ。(筆者:日中関係研究所所長、福井県立大学終身教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2017年4月28日