「これであなたへの借りは何もありません」
1942、16歳で日本帝国海軍に志願入隊した渡辺清さんは、4年後にこのような文章で結ぶ手紙を書き、故郷を離れた。
20日付韓国紙『東亜日報』は、太平洋の戦場から故郷に帰還した兵士の手記『粉砕の神』を紹介した。この手記は渡辺清さんという日本の敗残兵の、真実の経験を描いている。「長男ではないので引き継ぐものがなく、自ら生きる道を探そうと軍隊を選んだ少年だった」
同書は、「天皇への恩返し」と思って戦った渡辺さんが敗戦後、天皇に対する虚像から苦しみながら脱する過程を描く。現人神だと信じた天皇終戦後、何の責任も負わないことに渡辺さんは深い裏切りを感じた。天皇を神と崇拝するように教えた学校の教師、戦争時に入隊しろと煽った知識人が終戦後、いつそんなことがあったのかと言わんばかりに否定する姿に渡辺さんは戸惑い、苦しんだ。
著者は天皇に対する殺意をありのまま書き、「無責任な天皇を狂熱的に信じた」自分を反省し始める。日本の経済学者・河上肇の『貧乏物語』と『近世経済思想史論』を読んで、彼が受けた「詰め込み式の教育」によって、自分の中に天皇の虚像が作られたことを理解した。平凡な個人が自らの目で世の中を見ることになる過程を、著者本人の声で淡々を語る。それゆえ一層感動的と言える。
日本の天皇、国民にとってどのような存在か?
近代日本の天皇は、明治維新の時代に形成された。日本が近代化に向かう過程において、天皇の権威と地位が絶えず強化され、固められていった。1889年2月に公布された「大日本帝国憲法」は、天皇を「万世一系」と称し、国家権力の核心を上回る比類なき権力を与えた。