文:陳言(日本企業[中国]研究院・執行院長)
最近、日本企業の「技術イノベーション」に関する文章が相次いで出され、日本企業へ取材に行っても技術者たちが自社のイノベーションについて話すのを聞くことができる。もし、日本企業がこの20年間に本当にイノベーションを実現していたなら、日本経済は「失われた20年」からすでに脱出し、中国や世界は至るところで日本企業によるイノベーションの成果を享受することができるはずだ。実際に、使いやすい日用製品を除くと、40年前に初めてみたカシオの電卓や日立のカラーテレビのように、中国人を殺到させる日本製品はあまりみかけなくなった。
『日本経済新聞』が伝えた日本製品の2016年世界シェアをみると、全体で各製品のトップ3に選ばれた製品の数が最も多いのは米国(60件)、次いで日本(34件)だった。日本製品では、パナソニックのリチウムイオン電池、ファナックのロボット、三菱ケミカルの炭素繊維などがランクイン。日本製品がこれほど世界シェアを握っていることは、日本がイノベーション能力で米国以外の国を上回り、強いイノベーション能力を持っていることを意味しているのだろうか?
この問題に答えるには「イノベーション」を定義する必要がある。筆者は、イノベーション製品とは「新たな市場をつくり、爆発的な普及力を持つ」ものと考えている。日本製品は確かに「高性能」「高品質」という特長があるため、世界の一部市場で比較的高いシェアを有し、特に材料などの市場では非常に高いシェアを持つ。しかし、携帯電話端末やドローンなどの完成品をみると、世界で絶対的な地位を確立した商品のなかに日本製品の影を見るのは難しい。
日本のある政府機関は以前、アップルの携帯電話端末を解体し、部品のほぼ半分が日本企業の生産したものだったことを調べた。部品の価格からみると、アップルの携帯電話端末の部品で最もお金を稼いでいるのは日本企業となり、技術的に他国が取って代わることができないのも日本企業だ。しかし、同機関は最後に、日本にはこのように優れた部品企業、多くの部品組立メーカー、世界の消費者に知られるブランドがあるのに、ついに日本の携帯電話端末が世界の主流になれず、大きな世界市場を占有することができなかったと感慨げに指摘している。