日本の安倍晋三首相が仕掛けた衆院選は、激しい決戦の段階に入っている。平和憲法を改正すべきか、いつ改正するか、どこを改正するかは国の根本に関わる問題だ。合従連衡と激しい駆け引きにより、3つの政治勢力による選挙構造が形成された。メディアは「3極混戦」として分析・評価している。
いわゆる政界の「3極」とは、政権を握り改憲を推進する自公両党による「伝統的保守」の1極だ。次に小池百合子氏が率いる希望の党は、民進党の改憲派を招き、日本維新の会と協力し改憲を主張し、「改革的保守」と呼ばれている。それから護憲理念を貫く日本共産党、社民党、立憲民主党が協力し形成する、左翼の進歩的護憲の1極だ。
「3極混戦」は等辺三角形ではなく、3者鼎立でもない。衆議院は465議席で、自公両党は310議席を確保しなければ、改憲発議に必要な3分の2を占めることができない。政敵をけん制する目標を達成し、少なくとも3分の1の議席を確保するため、護憲勢力は全力で狙い撃ちしなければならない。護憲陣営には、強敵に勝つ実力がまだ備わっていない。
自公連立政権と希望の党の旗下に集結した新しい保守勢力の駆け引きが、選挙戦の見どころになっている。
希望の党は勢力を拡大し、全国で233人の候補者(衆院の過半数)を擁立した。小池代表は元自民党員で、保守的な立場を持ち、改憲を主張している。同党の一部議員は右翼カラーが濃厚で、改憲と歴史認識で自民党よりも右寄りだ。安倍首相による改憲戦略推進の「第2グループ」と呼べる。
公明党の改憲の立場は「加憲」で、「環境権」などの新条項を盛り込む。そのため安倍首相の、2018年に国会で改憲を発議するという主張に反対している。両党の改憲をめぐる食い違いは大きく、小池氏はこれを利用し公明党に秋波を送り、声を上げている。衆院選後に、公明党代表を首相候補に指名するのも良いだろうというのだ。これに自民党は緊張を強めており、公明党が裏切ることで権力を失うことを懸念している。
日本共産党と社民党は左翼で、立憲民主党を抱き込み、憲法9条を守ろうとしている。また安倍政権の安保政策を阻止しようとしている。しかし国民から支持を集めておらず、保守と保守の合流による乱気流に直面し、さらに非主流化する恐れがある。
立憲民主党が今回の衆院選で基礎を固め、議席を維持するか少しでも伸ばすことができれば、善戦したと言える。
このような政治状況を鑑み、衆院選後に日本の政権の構造には、次のような調整が生じるかもしれない。まず自公両党が過半数の233議席を手にし政権運営を維持するが、324議席という圧倒的な体制が打破される。次に改憲発議に必要な3分の2の議席数(310議席)を確保するため、安倍首相が一蓮托生の希望の党に餌をまき、保守大連合政権を形成する。
今回の衆院選で、自公両党にせよ自希連合にせよ、権力をめぐるゲームに夢中になり、民意を無視している。平和主義という国家の品格を自ら損ね、歴史の流れに逆行し、日本を「戦争できる国」にしようとしている。舟を浮かべるのは水だが、舟を沈めるのも水だ。政権運営は失敗に終わるだろう。(筆者:陸忠偉 中国現代国際関係研究院元院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2017年10月17日