陸海空の防衛装備にまで災いは及んでいた――。日本第3の鉄鋼メーカー「神戸製鋼所」の品質データ偽装のスキャンダルがますます広がっている。日本メディアは14日、データ偽装問題にかかわる製品が13種にまで増え、被害の及んだ調達企業は500社にも達したと伝えた。被害企業の長々としたリストには、三菱重工や川崎重工、SUBARU、IHIグループなどの複数の日本の軍事工業メーカーが名を連ねている。これらの企業は、日本自衛隊の主要装備を生産するメーカーである。
陸上自衛隊:装甲・大砲の性能の低下
日本新聞網によると、神戸製鋼所は、日本の自動車や造船、航空宇宙、電子などの工業部門に大量の一次製品を提供している。これには鉄粉や鋼鉄、アルミニウム製品、銅製品、液晶画面の生産に用いられる合金材料などが含まれる。自衛隊にとっては、今回のスキャンダルがもたらした最も頭の痛い問題は、影響が遅れて現れるということだろう。問題のある鋼材などの一次材料は戦車の車体や砲身などの完成品として作られてから部隊に配備される。そのためモジュール化された部品のように悪い場所だけを取り外すことはできず、装備に問題が出てから問題点を探すしかない。
陸上自衛隊にとっては、これらの粗悪材料は、装甲兵と砲兵の部隊の実力を大きく引き下げるものとなる可能性が高い。日本の軍事産業チェーンはこれまで、関連企業の内部にだけ延びていることが多かった。例えば三菱重工の生産する90式主力戦車や89式装甲戦闘車(歩兵戦闘車)などの自衛隊の装甲兵器は通常、同じグループの三菱製鋼や三菱伸銅などの企業からだけ原材料を調達する。だが日本防衛省は近年、入札募集の対象を拡大し、より実益のある原材料サプライヤーを探すようになっていた。神戸製鋼所が関連分野をターゲットにできるようになったのはそのためだ。
神戸製鋼所は合金鋼の精錬に長けている。業内関係者によると、同社は、砲身の内側のクロムメッキ技術で三菱製鋼の同業者より優れており、合金鋼装甲の生産でも独自の熱処理技術を持っている。冶金メーカーの偽装の手口として最もよく見られるのは、ニッケルやクロム、モリブデンなどの高価な戦略貴金属の配合含有量を減らし、高温精錬でも生産プロセスを減少させ、コストを引き下げるというものだという。
「偽装は簡単だが、識別は難しい」。自衛隊が専門家に頼んで全面的な検査を行わなければ、どの装備に問題があるかを判断するのは困難だろう。例えば戦車と装甲車の装甲が、浸炭表面硬化鋼装甲であるか普通の装甲であるかは、質量分析計を使わなければ細かく見分けることはできない。もしも問題のある装甲を装備していた場合、未来の実戦において戦車に高速の弾丸が命中すれば、装甲が撃ち抜かれることはないとしても、広い面積での破裂が起こり、防御力を失うことになりかねない。
陸上自衛隊は、2016年末の玖珠町駐屯地での公開活動で、96式装輪装甲車の車軸断裂事故を起こしている。同型装甲車はイラクでも、アンダーボディの鋼板のひび割れ問題を起こしている。同型車を生産する小松製作所は、神戸製鋼所の長期的な顧客である。これらの問題との関係の有無は、「偽装スキャンダル」が拡大する中、陸上自衛隊の心配の種になりそうだ。
海上自衛隊:潜水艦の品質に疑念