「米日豪印」の枠組みがまた蒸し返されようとしている。APECベトナムサミット開催中には4カ国の高官が正式に会談し、4カ国による安全対話を再開する意欲を示し、その進展が関心を呼んでいる。米日豪印協力が今再び打ち出された背景としてはまず、中国と米国の関係の新たな発展とアジア戦略に対する米国の新政権の新たな調整が挙げられる。さらにその他の3カ国の戦略の調整も背景となっている。(文:韓立群・中国現代国際関係研究院世界政治研究所中国対外関係研究室主任)
新たな協力が成功するかは、主に次の3つの要素にかかっていると言えるだろう。
カギを握るのはインド
トランプ大統領は、アジア太平洋を中心とした米国の伝統的な戦略を範囲のより広いインド太平洋地域へと広げた。そうなればインドも自然と視界に入ってくることとなる。だがこの構想には根本的な欠陥がある。
第一に、米日豪の3カ国は軍事同盟であり、互いに助け合う関係にある。インドは、米国と複数の防衛協力協定を結び、日本とオーストラリアとも立ち入った防衛協力を行っているが、「法定」の同盟国ではない。事態が悪化した場合、ほかの3カ国にはインドの安全を守る責任はない。インドは長期的に非同盟戦略を堅持しており、これが短期的に調整される可能性は低い。4カ国の協力が最終的にインドを中国を攻撃する最前線へと押しやるということは、保護を欠いた現状でインドが受け入れられることではない。
第二に、インドが経済的に大きな潜在力を持っていることは確かだが、米日豪3カ国の企業と資本に最終的にどれだけの利益をもたらすことができるかは未知数である。中米・中豪・中日の経済関係は、米印・日印・豪印のそれをはるかに超えている。米国の統計によると、2016年の米印間の財・サービス貿易総額は1148億ドルだったが、同期の中美間のそれは5786億ドルにのぼり、後者は前者の5倍に及んでいる。
第三に、中印間に戦略的な競争リスクが存在することは確かだが、両国には共通の利益も多い。例えば両国はいずれも、BRICS協力メカニズムと上海協力機構(SCO)のメンバーである。前者は経済協力を主とし、グローバル経済ガバナンスにおける新興国の発言権を高めることをねらいとしている。後者は地域の安全協力を主とし、中央アジアから南アジアにかけての広大な地域の安全を守ることをねらいとしている。これらはいずれも両国に利益をもたらしている。