白欣欣さんは「微信モーメンツ」(朋友圏、グループチャット機能)で、「うちのカーちゃんは初めての旅行で大阪から絵葉書を送ってくれた。連絡が途絶えて丸2日になるが、恋しくてしょうがない」と投稿した。
カーちゃんとは、1990年代生まれの白さんが携帯ゲーム「旅かえる」で飼っているカエルのことだ。この日本企業が開発した携帯ゲームは、昨年12月に日本でiOS版がリリースされた。最近は中国で人気沸騰中で、微信モーメンツやアカウントで話題を集め、中国エリアのApp Storeの無料ゲームランキングで1位になった。微博(ウェイボー)では「旅かえる」のハッシュタグがランキングの上位に食い込んだ。
白さんがカーちゃんの情報を投稿すると、多くのプレイヤーから注目された。自分のカエルを披露し、攻略情報を交換し、自分のカエルがどこに行ったか分からないと悩む。独身、さらには異性と交際していない人々が「口うるさい母」のようになり、モーメンツでぶつぶつつぶやいている。
カーちゃんが何度も旅行に行くと、白さんは親の辛さを理解した。「子供が旅に出ると母は心配する。私は実家を離れて何年もたつが、両親がいつも電話をかけてきて、何をしてるのかと一言しか聞いてこない気持ちを理解できた」
李文珊さんは以前ゲームをプレイしたことがないが、モーメンツが「旅かえる」の情報ばかりになると、好奇心に負けてプレイし始めた。「実際には存在しないキャラだが、名前をつければ自分のものになる。これは実際の暮らしの、親子の関係に少し似ている。カエルを飼ってはいるものの、自分の考えのある子どもで、プレイヤーの支配をまったく受けない」彼女はカエルとのこのような付き合い方を気に入っており、「家族や友人のようで、食事中や休憩中にアプリを立ち上げて、相手が何をしているのか知るだけで満足できる」と話した。
感情移入するだけでなく、課金するプレイヤーもいる。あるユーザーは微博で「本当に子供を育てているようで、最高のものを買ってやりたくなる。カエルの旅行を応援するため、睡眠中に数時間ごとに目覚ましを鳴らし、みつ葉を回収している」と投稿した。
記者の調べによると、このゲームのプレイヤーは若い女性が多い。現実の世界で、彼女たちの多くは自分の子供を持っていない。彼女たちはこのゲームで母の気持ちを理解し、「子供」によって生まれる心配や驚きを楽しんでいる。
中国科学院心理研究所継続教育学院客員教員の孫大強氏は、記者のインタビューに応じた際に「このゲームでは、カエルが何をしているのかは、事前に決まっていない。心理学的に論じると、この予測不可能な結果があるため、ドーパミンが分泌され一種の興奮状態が維持され、プレイヤーが興奮しやすくなる」と説明した。
中国伝媒大学ゲームデザイン学科長の陳京煒氏は、中国青年報、中青在線の記者に対して「ゲームデザインの角度から見ると、このゲームは近年流行している、ぼかした表現方法を採用している。ユーザーはゲーム内の情報が少ないため、自分の理解により空白を補うことで、ゲームへの感情を深める。またカエルはあちこちを旅行し、さまざまな写真を撮影し、異なるプレゼントを持ち帰る。コレクションの要素によりゲームを何度も楽しめるようになっており、プレイヤーには継続する理由とやる気が備わる。このゲームがこれほど大人気になっているのは、大衆心理とも関連している。同じモーメンツ内の友人が話題にしているのにプレイしなければ、共通の話題がなくなり非主流派になる。一部のプレイヤーはこれを理由に遊び、継続している。続けられるかは、ゲームを楽しいと感じるか、あるいは話題の中心的な地位を占めようとするかによって人それぞれだ」と分析した。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年1月26日