春節(旧正月、今年は2月16日)を目前に控え、寒さの厳しい今も、北京・中関村の創業大街には熱気が漂っている。30歳前後の人たちが慌ただしく歩き回っており、喫茶店に入っては提携パートナーや投資家と商談したりしている。また、喫茶店の宣伝ボードは「起業パートナー募集」と書かれた張り紙で埋め尽くされている。(文:陳言。瞭望東方周刊掲載)
それに対して、東京にいる筆者が、頻繁に大学に行って授業を行っている企業家の男性と若者の起業についての話をすると、彼は失望感を漂わせる。
彼によると、日本の名門大学を卒業した今の若者は、公務員、特に実家近くで地方公務員になることを望む。地方公務員の給料はそれほど高いとは言えず、出張も少ないものの、仕事は安定しており、実家に住み、そこで食事をしたりすることができる。そして、退職後の年金なども一般企業より多い。
東京や日本の他の都市にも、起業インキュベーション事業や政府による支援政策などがあり、関連の税収や雇用に関する法律も整っている。しかし、起業を望む日本の若者は減る一方だ。
前出の男性は、「僕たちが若い時は、チャンスがあれば絶対に起業していた。不景気になると、企業はリストラを実施すると同時に、工場の機械などを安値で従業員に譲ってくれていた。注文さえ取れれば、リストラされても起業できた」と振り返る。
そのような「熱意」が当時、日本の経済を急成長させ、日本企業や日本経済の国際的地位が築かれていった。
今の日本の資本蓄積や技術レベル、国際的地位などは、この男性が起業した30年前とは比べ物にならないほど高い。それでも彼が大学で、「若者の心を打つ講義ができた」と思っても、学生の反応は非常に薄く、がっかりするという。
企業、できれば大企業に就職して、それなりの給料をもらい、シンプルな暮らしを維持できればそれでいいというのが、今の日本のほとんどの若者の人生プランだ。そのような若者は、京セラ・KDDIの創業者で「経営のカリスマ」と呼ばれる稲盛和夫氏が提唱するような、必死に仕事をすることで一層豊かな人生を送るという考えは持っておらず、ゼロからの起業などは頭の片隅にもない。
そして、それなりの大学に行き、安定した企業に就職し、小さくはあるが確固とした幸せがあればそれで良いと思っている。そこに、大きな物欲もなければ、誰よりも成功したいという野望もない。
経済が発展し成熟すると、自然とこのような現象が起きるのだろうか?確かに、ここ約20年、国内総生産(GDP)の成長率が1%あたりをウロウロしており、高いリスクが伴う起業は避け、多くの人が歩んでいる安定した道を進みたいと若者が願うのも理解できないわけではない。
しかし、若者が起業に目をぎらつかせ、ここ数年2ケタのGDP成長率を保っている中国を、この男性は羨望の眼差しで見ている。彼は今の中国を、高度経済成長を実現した30年前の日本と重ねている。若者は意気込みとやる気にあふれており、起業し、成功を収めるには最も良い時代となっている。日本の黄金時代はすでに過去のものとなってしまったことは、中国の若者とは全く違う状態の日本の若者の姿からはっきりとうかがえる。(編集KN)
「人民網日本語版」2018年2月1日