その一方で、量的緩和策の副作用が拡大を続けている。(1)国債や株などの市場に深刻な歪みが生じてる。日銀が大量の国債を保有することで、国際市場が日増しに膠着化し、金融機能を失いつつある。日銀の資金が株式市場に大量に流入することで株価を引き上げているが、日銀の持ち株企業の株主の監督管理が不在になる問題も生じうる。最大のリスクは、今後の撤退の可能性だ。(2)マイナス金利の影響を受け、金融機関の収益力が弱まっている。三菱東京UFJ銀行などのメインバンクは、収益悪化により社員募集枠を大幅に削減し、国内の支店を合併もしくは減らし、海外進出を強めている。地方経済を支える地方銀行の状況はさらに深刻で、全国105の地方銀行の利益は、2017年に2012年比で97%も減少した。(3)預金金利ゼロは、貯蓄を好む一般人に影響を及ぼし、銀行預金で生活している高齢者に衝撃を及ぼしている。(4)超量的緩和策は政府の債務による資金調達コストを大幅に削減したが、財政規律が弱まっている。「短期の政策金利はマイナス0.1%、10年国債収益率はゼロ」という政策枠組みにより、日本政府は財政刺激への依存を強め、2020年の財政健全化計画が棚上げされた。
スケジュール表の取り消しにより、日銀はある程度の政策の自由度を手にした。例えば物価が上がらず経済が上向くなか、量的緩和策を追加する必要がなく、かつ撤退を議論するための必要な条件を整えた。しかし2期目の黒田氏はより厳しい課題を迎える。2019年の消費増税が経済の圧力を形成し、2020年の五輪特需も失われる。同時に米連邦準備制度理事会は利上げを着実に推進しており、欧州中央銀行も量的緩和の縮小を開始した。これらは日銀に大きなプレッシャーを形成する。(筆者・張玉来 南開大学日本研究院副院長)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年5月22日