12日まで、日本の豪雨ですでに200人の死者が出ており、70人が行方不明となっている。防災能力の高さで知られる日本だが、一度の豪雨でこれほど多くの死者が出たことが疑問視されている。
今回の豪雨は十数県・府に跨るが、死傷者の圧倒的多数が広島県と岡山県に集中している。自民党は長期政権運営中、農村部から票を集めるため「立ち遅れた地域」で多くのインフラを整備し、都市部と農村部の格差を縮小した。しかし半世紀の間に、日本の人口と資源は大都市に集中し、農村への関心が薄れた。インフラが修理されず老朽化し、災害に耐える力が弱まった。これは今回の豪雨で多くの死傷者が出た原因の一つだ。
現状を見ると、非常に強い豪雨では土石流などの二次災害が発生しやすく、死傷の主な原因は天災となっている。「人災」であるという有力な証拠は見つかっていない。メディアと野党は気象庁が5日に大雨警報を発令した後、安倍首相ら自民党高官が「赤坂自民亭」で酒を飲んでいたと批判した。本件は確かに安倍内閣のイメージを損ねたが、災害救援が最優先される状況下、野党とメディアもこの件ばかりにこだわるわけにはいかない。さらに内幕が暴かれるのでなければ、安倍内閣に衝撃が及ぶことはない。
今回の豪雨は一般人の命と財産に深刻な損害をもたらしたが、安倍氏や自民党に利益拡大のチャンスを与えたことも間違いない。
まず、安倍氏は9月の自民党総裁選を控え、災害救援により注目度を高め、被災地で謙虚で親しみをアピールすることで、イメージを改善できる。これは現職の首相としての強みだ。特に今回の総裁選では地方票の重みが増すため、今回の災害救援により安倍氏は地方の支持を拡大し、再選の基礎を固めることができる。
次に、与野党の休戦は安倍氏の支持率回復の維持を促す。メディアによる森友・加計学園問題への追及が一段落し、安倍内閣の支持率は緩やかな回復の流れを示している。立憲民主党などの野党は安倍氏のスキャンダルへの追及を諦めていなかったが、水害発生により災害救援と再建が中心任務になった。立憲民主党の枝野幸男代表は「政治休戦」を掲げ、この時期に安倍氏を攻撃することで国民の反感を買うことを避けた。一時的にスキャンダルから解放されることは、安倍氏にとって自ずと有利だ。
それから、安倍政権と自民党が財政拡大の支持を得やすくなる。日本経済新聞などのメディアは、被災状況の拡大の原因は、地方のインフラの不足と老朽化だと「反省」している。安倍氏は2012年に首相に就任すると、インフラ改善の「国土強靱化」政策を実施した。水害発生後、自民党の多くの重鎮が、災害は「国土強靭化」の重要性を反映したと強調している。
さらに、今回の災害は自民党が改憲案で示した「緊急事態条項」を、憲法に新設する上で有利とする声もある。緊急事態条項の軸となるのは、緊急事態時に需要に基づき、政府に法律を制定する権限を与えることだ。これは事実上、政府の権力拡大だ。しかし安倍氏の改憲目標の中で最も中心的になっているのは、自衛隊の憲法への明記だ。右翼メディアは早くから、自衛隊が災害救援などで重要な力を発揮しているが、憲法はその存在を認めていないと吹聴していた。毎日新聞の5月の世論調査では、自衛隊の憲法明記の反対者が支持者をやや上回っていた。災害救援で自衛隊が「活躍」すれば、政府と一部メディアはこれによって気運を高め、現在の不利な状況を巻き返し、安倍氏の改憲計画を支援することができる(筆者・霍建崗 中国現代国際関係研究院日本研究所副研究員)。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2018年7月13日