米国が各地で関税の棍棒を振るうなか、国際社会からは自ずと、主要輸出国が「統一戦線」を張ることに期待する声が上がっている。ところがEUの代表者が日本で「日EU経済連携協定(日欧EPA)」に署名し、双方が緊急対策を講じる積極的な姿勢を示したことで、この統一戦線の切実さは未来のより大規模な貿易秩序を巡る攻防戦の重要性に席を譲った。潜在的な盟友の大きな動きは、中国が貿易戦争に正面から向き合う戦術的な難易度を高めた。
しかしトランプ氏による関税の攻勢を受け、日本政府は全体的に静観し、報復措置を講じないと正式に表明することで、米国との正面衝突を極力回避しようとしている。日本はWTOで対抗姿勢を示したが、これは一つの手続きであり、報復の発動条件を留めると宣言したに過ぎず、対等の報復措置を講じたわけではない。実際の政策は既定の方針を貫いている。順を追いFTAの陣地を着実に構築し、未来のより大規模な貿易攻防戦に備えるというわけだ。現状を見ると、日本は東側でTPP11を主導し、北米自由貿易協定(NAFTA)を瓦解させようとしている。西側では日欧EPAの署名により、ユーラシア大陸の城壁を構築することで、RCEP交渉の主導権を奪回し、国際貿易秩序を全面的に掌握する条件を整える。日本は7月上旬にシンガポールと共同議長国になり、RCEP閣僚会合を東京で開き、主導権を握った。未来の勝者になるための地位を築こうとした。
表面的に見ると、日本は別の城壁も構築している。これは自由と公平を強調する、日米両国間の通商交渉の新たな枠組みのことで、米国と攻防戦を展開する。しかしこれは囮であり、米国を接近戦に誘い込み、別にFTAの陣地を構築する余地を作ることで、未来の貿易秩序をめぐる攻防戦に勝とうとしている。
現状を見ると、世界の形成済み・交渉中のFTAの経済規模は72兆1000億ドルに達し、世界のGDP(86兆9000億ドル)の82.9%を占めている。うち最大の割合を占めるのは先進国間のもの、もしくは先進国が主導するものだ。EUは19兆6700億ドル、米国とEUが主導する大西洋横断貿易投資パートナーシップ協定(TTIP)は40兆800億ドル、NAFTAは23兆4200億ドル。ASEANは2兆9700万ドルのみで、中日韓FTAは20兆9500億ドル、RCEPは28兆5000億ドル、TPP11は約11兆3800億ドル。米国がTPPに加わればその経済規模は3倍に膨れ上がり、世界の約4割を占める。そのため日本は米国が考えを改め、日本が主導しているTPPの枠組みに戻ることを願っている。
国際貿易秩序をめぐる攻防戦は、遅かれ早かれ生じる。眼前の関税をめぐる戦いは、未来の秩序の破壊と構築に向けた前哨戦に過ぎない。そのため中国はより広い視野を持ち、貿易市場の分布をはっきり見ることで、戦略的盟友を発見し共通する利益を見つけるべきだ。地域もしくは利益の承認を確立し、共通の市場を構築し、世界競争戦略を掘り下げる。こうして初めて持久戦を続け、陣地をめぐる戦いに勝利できる。
中国の経済規模はすでに10億ドルを超え、貿易額も4兆ドル以上に達している。内外の投資が全面的に展開されている。大きな中国経済は、現在の世界が無視できない事実となっている。世界経済は構造的にも、中国・米国・欧州の三極化の傾向を示している。この不安定な三角形がもたらす不確実なリスクは、世界的なものになる。そのため我々が国際競争に参加する形式と方法も、この規模と事実に合致する必要がある。(筆者・劉軍紅中国現代国際関係研究院研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2018年8月5日