情報によると、昨年の訪日中国人客は延べ800万人を突破した。彼らは日本の商品とサービスを購入し、国内の同胞と自分の観点を共有する。ところが中日の観光交流には非対称性が生まれている。訪日中国人客の増加は、訪中日本人客の増加を遥かに上回っているのだ。世論調査によると、この現象と関連し中国人の日本に対する好感度が目に見えて上がったが、その逆には大きな変化がなかった。この問題は長期化しており、思考に値する。
日本人の中国に対する好感度が目に見えて上がっていないのはなぜだろうか。さまざまな意見を集めると、「日本の反応が遅い」「日米同盟」「価値観の相違」という説にまとめることができる。1つ目は、両国関係の氷が一日にして溶けることはなく、日本の民意の変化にはまだ時間が必要という観点だ。2つ目は、日米同盟が日本の外交枠組みを作っており、そのため日本は米国の束縛を脱し中国に近づくことができないとう観点だ。3つ目は中日両国の重要な価値観が異なり、その間には大きな溝があり互いに歩み寄りが困難という観点だ。
これらの説はいずれも理にかなっているが、客観的な制度と心理の固定化という共通点がある。政治・外交当局及び双方の国民の主体的な活動の潜在力への評価が欠けている。今日の世界の政治は重大な変化に直面しており、中日両国は不確実な時代に入っている。各種制度枠組みとその心理は見直しを迫られている。この時期に同じ経済大国でアジアの近隣である中国と日本は、どのような時よりも緊密に協力する必要がある。
それでは時代と両国の国民の利益に合致する中日関係をどのように構築すべきだろうか。これまでの中国の日本に対する認識の形成を振り返ると、往々にして国民から政府へと構築されており、より安定的な効果を持つ。反対に日本人の中国に対する認識の形成については、日本政府とメディアが大きな力を握っている。
幸い、中日双方が相手側の報道方法の問題を指摘し、見直している。中国メディアは近年、「抗日神劇」を痛烈に批判している。日本メディアも出版界で流行している「中国崩壊論」について反省した。互いの報道方法を検討し、それに応じた調整をすることを、議事日程に上げるべきかもしれない。
中日の交流は当初の国家及び経済・貿易レベルから、一般人の生活レベルまで拡大している。中国人客は東京や大阪から日本各地に向かい、名所旧跡を訪れ温泉を楽しんでいる。日本の寿司職人、美容師、歯医者などは西の中国に渡り、その卓越した技術とプロ精神で中国人から好評を博している。
改革開放後、日本の多くの学術論文が中国語に翻訳され、現代中国学術言語と研究モデルに影響を及ぼした。中日は現在、少子高齢化などの共通する差し迫った数多くの課題に直面している。そのため中日両国はこれまで以上に相手国を必要としており、これまで以上に歩み寄っている。筆者は、中日両国は多くの分野で交流を掘り下げられると考えている。例えば21世紀の新エネ、AI、5G技術などの社会・経済への影響の議論などだ。双方は「中日共同知識」分野を開拓し、これを踏まえた上で「中日知識共同体」を構築するべきだ。
中日間には感動が必要で、多くの「知日派」と「知中派」を育成する必要がある。中日双方はグローバル化人材を共同育成し、彼らを中日ひいてはアジアを結ぶ紐帯にする。今日のアジアはエリートが不足していないかもしれないが、アジアの一般レベルを変える熱意あふれる若者を必要としている。貧困削減、義務教育の普及、基本医療保障システムの構築のため、中日は小さな事から共に取り組むことができるのではなかろうか。(筆者・劉迪 杏林大学大学院教授)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2019年1月17日