日産元会長のゴーン被告が日本の警察から逃げ切った事件は、国際メディアから広く注目された。筆者は逃亡事件の過程と事件そのもの、ゴーン被告と日本側の主張の食い違いについては論評を控え、本件が反映する「普遍性」の問題に重点を置く。(筆者・趙永昇 対外経済貿易大学フランス経済研究センター主任)
グローバル化が加速する今日、「海外M&A」はすでに新常態となっている。フランスと日本は世界の自動車産業で重要な地位を占めている。グローバル化の加速によりこの東西2大自動車国が緊密に結びついた。ルノーは1999年に52億ドルを出資し、日産の36.8%の株式、日産ディーゼルの22.5%の株式、日産の欧州における5つの財務子会社を取得した。事業提携の当初、双方の関係は極めて良好だった。日産の日本における市場シェアは1999年まで27年連続で低下し、負債総額が2兆1000億円にのぼった。フランス側は自社の海外事業展開の需要を立脚点とし、日本側はこれに礼で応じた。この段階において、フランス人も日本人も「資本に国境はない」という論断を信じていた。
ところが多くの功利的な結婚と同様、問題も時間の経過に伴い徐々に顕在化した。このM&Aは一般的な海外M&Aよりも複雑で、両社間の利益争いのほかに、仏日両国の自動車産業及び全体的な産業戦略の争いが混じった。日産の業績が低迷していた段階では対立はそれほど表面化しなかったが、ゴーン被告が抜本的な改革により再建を果たすと、「資本に国境はない」が効果を失い始めた。「資本はまず国のもの」という論断が両国で有利になった。
ルノーのM&A以降の損失の教訓については、次の結論を導き出せる。まず、買収側が「社会的効果」を目指すことが極めて重要だ。ゴーン被告は日産のため17年働いたが、なぜ日本人は感謝していないのだろうか。ゴーン被告の日産リバイバルプランには、「3年内に22種の新製品を発売、生産コストを20%削減、2万1000人を解雇、工場5社を閉鎖、自動車と関連のない事業をカット」という内容が含まれる。この計画を実施してから2年間で、日産は黒字化を実現した。ところが2万1000人の解雇、それからサプライヤー数の大幅な縮小は、いずれも企業が「経済効果」を求め「社会的効果」を無視したことを意味する。最終的にその副作用が生じたことも理解できる。
次に、現地の文化と社会習慣を尊重する必要がある。日本企業及び社会には閉塞的な観念、保守的なやり方といった問題がある程度存在しているかもしれないが、重要なのは異なる文化を背景としながらどのような態度で違いと向き合うかだ。ゴーン被告は著書『ルネッサンス ― 再生への挑戦』の中で、日本の文化及び社会習慣に対する反感を露呈し、さらにはそのことに得意になって喜んでいる。これは将来の問題の種をまいた。
ゴーン被告の逃亡は世界の人々にショックを与えたが、それ以上に多くの思考を促した。これは海外M&Aのリスクを反映している。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年1月18日