文=外交学院国際関係研究所 周永生
クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で16日、新たに70人の新型コロナウイルス感染が確認され、クルーズ船の感染者は計289人となった。日本政府は、80歳以上の高齢者を対象に、持病がある乗客や窓がない部屋に滞在する乗客は検査して陰性が確認された場合、希望者を下船させ、政府が準備した施設に移動するとした。
ダイヤモンド・プリンセス号は、米カーニバルのクルーズブランド、プリンセス・クルーズ傘下の最大クラスの豪華客船で、1月20日に横浜を出港し、鹿児島経由で25日に香港に到着、一部の乗客が下船後、ベトナムのダナン、ハノイ、台湾の基隆、日本の沖縄などに寄港し、15泊16日の旅を終え、2月4日に横浜に戻ってきた。クルーズ船には世界各地の乗客2666人、乗員1045人合わせて3711人が乗船している。
同クルーズ船での新型コロナウイルスの感染拡大は香港籍の乗客が発端となった。この乗客は1月10日に羅湖口岸から中国に渡り数時間滞在後、17日に香港から飛行機で東京へ渡航、19日に咳が出始め、20日に横浜で同クルーズ船に乗船し、25日に香港のカイタック クルーズターミナルで下船、30日に発熱して病院で受診し、入院して隔離治療を受けることになった。そして2月1日、新型コロナウイルスの陽性と診断された。
香港特別行政区政府は一連の情況を日本政府に報告、日本政府は2月5日に横浜港に到着予定だったダイヤモンド・プリンセス号を4日に横浜に到着させ、全乗員・乗客の下船を禁じ、船内での検疫を求めた。それ以降、船内では感染の拡大がいまも続いている。こうした情況に船内の乗客や他の国への不安が広がっている。米疾病対策センター(CDC)の当局者は15日、米国務省は乗船中の米国人と家族を退避させる準備ができたと発表。香港当局も同日、検疫検査を受けた乗船中の香港住民を退避させる無料のチャーター機を準備したと発表した。
日本政府がクルーズ船の乗員・乗客を14日間隔離すると発表したのが今月5日。その隔離期間は19日で終了するが、感染者が拡大する中、19日の隔離終了は現実的に難しくなってきている。ただ、これだけ多くの人を下船させて隔離するとなると、感染範囲がさらに拡大する恐れがある。80歳以上の高齢者で、持病がある人を対象に下船させて隔離することにしたのは日本政府とってはやむを得ない選択だった。
ただ、このまま船上で隔離を続けるとなると、感染者がさらに増える可能性がある。船上隔離は長期的には得策ではない。1911年に中国東北部で発生したペスト対策でも2003年に中国で発生したSARS対策でも、陽性の患者や疑いのある患者への隔離は、感染をコントロールするのに有効な手段だった。日本政府はクルーズ船の全乗客・乗員を隔離しているものの、感染が疑われる人や潜伏期間中の可能性がある人と、感染していない人を別々に隔離していない。限られたクルーズ船という空間の中で3000人以上、もしくはその半数以上を別々に隔離するのは現実的に難しい。そのため、感染が疑われる人を下船させ、伝染病専門の病院で隔離するなど感染していない人と分けて隔離するのが最善の策と思われる。
下船させた後の隔離については多様な対応が可能だ。伝染病専門の病院で隔離するのが一番だが、病室やベッドの数が足りない場合は人口密度が高い地域から離れたホテルで隔離・観察することもできる。その場合、潜伏期間中の感染者を個室に滞在させ、互いに行き来させないことだ。しっかり防護した医療関係者とサービススタッフだけが必要最小限の接触をするようにすれば交差感染を回避できる。それが難しいなら、当時のペスト対策を参考に、列車の車両を臨時改造すれば、臨時の経過観察場所とすることができる。
こうした対策をとれば、クルーズ船上の乗客・乗員の交差感染拡大だけでなく、日本国内での感染者拡大も食い止めることができるだろう。
中国で新型コロナウイルスが大流行後、日本政府をはじめ、日本の民間人や企業による中国への人道主義的支援活動が大規模に行われ、防護マスクや防護服、医療機器など様々な支援物資が届いている。日本の都市部の商店街では、「中国加油(がんばれ)!」「武漢加油!」の温かいスローガンをいたるところで目にする。支援物資の箱に書かれた「山川異域,風月同天」(住む場所は異なっていても、風月の営みは同じ空の下でつながっている)、「豈曰無衣,与子同裳」(足りない物は共有して補おうではないか)、「青山一道同雲雨,明月何曾是両郷」(風も雨も乗り越えてきた親友が、遠く離れたところに住んでいても、同じ空で同じ月を眺めている)、「相知無遠近,万里尚為隣」(互いを知るには遠近の別はなく、万里を隔てても隣人となり得る)といった古い詩は中国の人々の感動を呼んだ。安倍首相率いる自民党は役員会を開き、新型コロナウイルスの感染が拡大する中国を支援するため党所属の国会議員の3月分の歳費から一律5000円を天引きし、支援金として中国側に送ることを決めた。日本側のこうした行動やメッセージは、まさに「意内称長短、終身荷聖情」(心中衣の丈を見積もってみると、 自分の体にぴったりだ。 天子からこれを賜った御恩情は一生忘れはしない)といえる。
日本が直面しているクルーズ船での感染拡大という難題について、筆者は中国の学者として微力ではあるが、できる限りの知恵をしぼってみた。役立つところがあれば、日本政府の新型コロナウイルス対策の参考意見としてもらえれば幸いだ。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2020年2月18日