新型コロナウイルスがパブリックセーフティとバイオセーフティの危機として世界を席巻している。マイナスの影響と同時に客観的には別の一面もある。それは、感染症対策に取り組む上で世界と地域のパブリックセーフティにおける協力の必要性が増し、地域または地域を越えたメカニズムの構築につながるということだ。そうした意味では東アジア地域の相互協力は代表的といえる。(文=国防大学教授 楊育才)
歴史的要因から東アジアにおける安全保障の協力メカニズム構築は、地域経済・社会の発展のニーズに大きく後れをとってきた。冷戦終結後、経済のグローバル化により東アジア地域の発展は誰の目にも明らかであったが、外部の力の介入と冷戦期の慣性力の影響を受け、冷戦が残した国家間の敵対意識がうっすら垣間見え、地域内の恩怨は遅々として有効に清算されず、時には新たな対立や衝突、政治や安全保障の分裂が生じ、統一した地域安全保障メカニズムを構築するのは難しかった。時代はこうした古い構造を打破し、新たな局面を切り開くことを求めている。新型コロナウイルスの感染拡大に対処する過程は安全保障協力を深化させ、統一の地域安全保障メカニズムを構築するための貴重なきっかけとなった。
コロナ危機という現実が地域の国家間の密接な協力を後押しし、公衆安全の脅威と危機に共に立ち向かっている。今回のウイルスは5大陸に波及し、多くの国で爆発の勢いが収まらず、この数十年で最も感染スピードが速く、最も感染範囲が広く、最も封じ込めが難しい公衆衛生上の緊急事態となっている。実践が証明しているように、新型ウイルスの封じ込めは一国または数カ国でできることではない。国際協力を最大限に展開していく必要がある。そして共同対応、行動連携こそウイルスを有効に封じ込め、最終的に危機から脱却するカギとなる。経済社会の結びつきが緊密な地域や国は特にそうだ。公衆安全の協力強化はすでに避けて通れない道であり、他に選択肢はない。
冷戦終結後の国際協力の実践をみると、伝統的安全保障の地位は下がり、地域やグローバルな範囲での公衆安全を含む非伝統的安全保障の協力強化が大きな波になりつつある。個別の国がゼロサムゲームや冷戦思想を意固地に堅持し、人為的に地域の矛盾や国家間の衝突を激化させようが、非伝統的安全保障のリスク上昇と非伝統的安全保障の協力の必要性を求める大きな波を阻むことはできない。
今回の新型ウイルスは危機の規模やその深刻さでいえば今世紀初めて国際テロリズムの脅威が顕在化して以来のまた一つの節点となるだろう。しかも危機の影響の広さや深刻さが積もり積もって質的変化に及ぶターニングポイントに達する可能性が極めて高い。今回東アジア地域の中国、韓国、日本はいずれも甚大な影響を受けたが、共通の危機に対する相互支援と協力によってこれまでになく2国間、多国間の関係は改善され、長期的視野に立った地域安全保障協力を構築する上で有益な状況が訪れている。
総合的な安全保障と共通の安全保障を形成するという新時代のニーズを考えると、新型ウイルスとの闘いが全面的な非伝統的安全保障協力の発展につながり、地域全体の安全保障体系の変化を後押しし、新たな安全保障体制の構築と従来の安全保障体制の再構築を促すことは必然的だ。地域国家の共通の利益に合ったすべての要素は残り、地域国家の共通の利益に不利で時代遅れな要素は淘汰されるだろう。東アジア諸国の間には最も密接な経済、社会、歴史的つながりがあり、近代における民族国家の建設以来根本的な利益衝突はなく、地域共通の利益を前に共同発展と安全保障という難題に立ち向かい、地域一体化の長期計画を策定することが求められている。こうしたことが余りに長く先延ばしにされてきた。だからこそ今回の新型ウイルスが爆発後危機的状況にある中、地域の国家間で稀にみる友好的な相互支援が実現し、いずれの国も感染症対策にうまく取り組む一方で、これをきっかけに地域の国家間の関係に良い相互作用が働くよう努めた。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年4月2日