インド、日本、オーストラリアの経済貿易担当大臣が近く、3カ国間の「サプライチェーン・レジリエンス・イニシアチブ」の構築に向けた第1回閣僚会議を日本政府の提案で開くことを複数のインドメディアが明らかにした。2国間のサプライチェーンネットワークをベースに代替案を立て、中国のサプライチェーンへの依存から脱却するのがねらい。合意に至れば、「サプライチェーン連盟」と呼ばれるこのイニシアチブは東南アジア諸国連合(ASEAN)にも開放されるという。このことは、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に始まったサプライチェーン調整の動きの延長であるとともに、複雑に錯綜する地政学的思惑も絡んでおり、その裏には「4カ国メカニズム」を狙う米国の目に見えない手が見え隠れする。(清華大学国家戦略研究院研究部主任、研究員 銭峰氏)
90年代から始まったグローバル化の波により密接融合型、相互依存型のグローバルな産業チェーン、バリューチェーン、サプライチェーンが構築されたものの、近年の保護貿易主義の台頭、新技術や産業革命の勃興、ポピュリズム勢力の台頭、貧富の差の拡大によりコロナ禍以前からグローバル化には退行の兆しがみられた。さらに深刻なコロナ禍で世界中の物流や生産が打撃を受け、国際分業を背景とするサプライチェーンの脆弱性が露呈、多くの国の政治や経済、国民生活、安全保障などに衝撃をもたらした。このことで多くの国の政府は産業配置やサプライチェーンの安全問題を再考せざるを得なくなった。中国はいち早くコロナ禍から脱却し、強靭な生産供給力を見せつけた。これは世界中のコロナ対策に多大な尽力をすると同時に、戦略物資の供給における過度な中国依存に一部の国で不安を生み、脱中国の呼び声を高めることとなった。中米関係の不穏な動き、米国の対中けん制強化など非経済的影響を受け、一部の国はリスク回避のため関連産業の国内回帰や中国以外の国への移転を促している。
インドでは、モディ政権が今年5月、土地や雇用、税制などの法制度を見直し、「メイド・イン・インディア」の振興を重点に、国内での新たなサプライチェーンと市場の構築を目指す大規模な経済刺激策を打ち出した。中印国境での対立や衝突事件後、インドは経済分野での「中国排斥」の歩みを強める一方、積極的に国際協力を求め、米国の対中切り離し政策に迎合し、多くの米国企業に接触し、中国からの移転事業を受け入れる大規模な土地提供を大々的に宣言している。