日本の菅内閣の発足後、行政改革担当大臣に就任した河野太郎氏は、行政の官僚主義やさまざまな規制についての苦情を受け付けるオンラインルートを開設した。ところが予想に反し、わずか数時間で苦情のEメールが多すぎページの閉鎖を余儀なくされ、人々から注目を集めた。
本件が日本で大きな反響を呼んだのは、これが数十年に渡る日本の「痼疾」を反映したからだ。まず、日本の行政は規則が多すぎ、手続きで決まりきった手順を踏まえなければならず、機械的で「ロボット」のようだ。これは官僚主義を生み、行政の効率を落としている。次に、河野氏が行政改革大臣の就任早々に官僚主義に反発したことで炎上し、「政治的常識」が欠けていることを露呈した。
しかし日本の政治において、「改革」は事実上、冷戦後に毎年叫ばれる、すべての政権が叫ぶスローガンになっている。 どこにでも適用できる真理、歴代政権の難題解消の「妙案」になっている。1993年に自民党が初めて単独の政権運営の機会を失った後、細川護煕氏の「規制緩和」、橋本龍太郎氏の「6つの改革」、さらには「小泉改革」が行われた。しかしさまざまな目に見えない規制が日本の行政に充満し、行政効率、生産性、潜在的な成長率を大幅に引き下げる足かせになっている。これは事実上、日本経済の長期低迷・停滞の制度的な要因でもある。
例えば経済産業省の1階では、列に並び自分の順番を待ち、政府職員との相談を待ち、経営問題を解消するための「行政指導」を聞くか、苦情を出す企業界の関係者を見ることができる。経済産業は激しい競争が展開されているように見えるが、実際には参入資格の規制があり、参入しなければ競争できない。参入できる企業については、目に見えない規制が存在している。一部の企業がコロナ禍にリモートワークを推進したところ、社内のホームページが「ローカルネットワーク」であり、外部のネットワークに接続するのが面倒で攻撃を受けやすいことが分かった。さらにはオンラインの署名が無効で、会社に戻りこれまで使用してきた判子を使わなければならなかった。オンライン化、デジタル化、リモート化、さらにはスマート化が瞬時にしてこの小さな判子に妨げられたと言える。
優れた技術、市場に適したアイデアを持ちながら、ベンチャー投資と自主革新がさまざまな目に見えない壁に直面している。安倍政権は働き方改革と女性の雇用を推進し、さらには「ドア」を開き外国人労働者を受け入れた。しかしベンチャー企業、次の時代を決める先導的技術産業は凝り固まった労働制度、銀行主導の金融制度、官僚主導の行政制度に直面し、その多くが挫折を余儀なくされている。
この現状を形成した主因は、伝統産業を始めとする既得権益者、それと関連する行政の利益集団、裏で操作する政治の利益集団(いわゆる「政官財」)の鉄のトライアングルが依然として堅固であることだ。歴代政権が改革のスローガンを叫びながら、真の改革に取り組まなかったことが根本的な問題だ。安倍政権は7年8カ月の運営に渡り「保守主義改革」を標榜したが、実際には大きな産業資本と金融資本に利益を与えた。例えば法人税減税を推進しながら、個人の増税に全力を尽くし、消費税率を5%から10%に上げた。消費税は社会保障費だけを賄うものではなく、出産補助などの「アベ政治」に使われた。多くの低所得層は実質賃金が増えないうちに増税という苦境に直面せざるを得なくなった。
菅内閣が安倍政権の看板を引き継ぎ、改革の旗印を掲げ、「平民首相」の実務的な道を歩めるかについては、主に菅氏が広く認められる「改革の作用点」を早急に打ち出せるかを見なければならない。これは改革が現在の苦境を脱せるか、日本経済が新技術時代にチャンスをつかみ復興を迎えられるかに関わる。(筆者・劉軍紅 中国現代国際関係研究院研究員)
「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年9月23日