中国企業の対外投資は近年、国際社会から注目されている。しかし東南アジアのインフラ整備においては、日本の巨大な商業集団が日本政府及び準政府機関の力強いサポートを受け、投資規模で圧倒的有利な地位を占めている。コロナ禍で中日両国の対東南アジア投資規模がやや減少したが、日本と中国の間の差がさらに広がった。
英誌「エコノミスト」は、「中国と日本がそれぞれベトナムのハノイ及びホーチミンで請け負う2本の地下鉄が間もなく開通し、運行開始される。これはベトナム現代化建設のシンボルであり、東南アジアのインフラ整備をめぐる中日両国の激しい競争の縮図でもある」と伝えた。
バイデン政権が「ビルド・バック・ベター・ワールド(B3W)」を宣言し、中国の「一帯一路」イニシアチブと対抗し合うことに加え、日本の政界で激しい変化が生じていることから、日本という東南アジアの「静かな巨人」はこれまでの低姿勢を変える可能性がある。
日本の対東南アジア投資は世界最大
日本にとって、海外に日本を築き、富を海外に隠すという方針はもはや秘密ではない。日本の対外純資産残高は世界一で、長年連続で世界最大の債権国の地位を保っている。東南アジア諸国への投資(特にASEAN10カ国への直接投資)も世界をリードする流れを示している。
「エコノミスト」によると、今年7月現在の日本のインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムにおける未完成プロジェクトの投資総額は2590億ドルで、中国は1570億ドルとなっている。日本の経済産業省が7月に発表した「第50回海外事業活動基本調査」の結果によると、日本のアジア諸国における現地法人は約1万7400社で、うちASEAN10カ国の割合が9年連続で上がっている。
日本の財務省が2月に発表した国際収支統計によると、感染症の影響を受け日本の昨年の対ASEAN直接投資が4年ぶりに減少し、日本の対外投資の12.2%を占める約2兆3000億円となった。これは日本の対中投資の2倍以上、対米投資の約半分だ。
中国社会科学院日本研究所の陳祥副研究員は「環球時報」に対して、「日本はこれまで低姿勢を保っていたが、これは主に中日双方が東南アジアで長期的に形成した相互補完、互恵、相互依存の関係と関連している。まず、東南アジア諸国の発展段階及び水準が一致しておらず、日本は重点的に東南アジアの資本集約型産業、ハイテク分野、現代金融サービス分野などに焦点を絞っていた。中国と日本は当初、対東南アジア投資の競合関係は協力を中心としていた。つまり各自で異なる分野を深く耕しており、競争や重複する分野が相対的に少なかった。しかも東南アジアは世界のバリューチェーンとサプライチェーンが最も密集する地域で、これらは特定の国が直接否定もしくは直接干渉できるものではない。中日間に相互依存が存在することを鑑み、日本は米国による中国制裁戦略をあいまいに処理し、低い姿勢で先に産業チェーンとサプライチェーンの保全を確保することで、自国の利益の損失を回避せざるを得なかった」と述べた。
陳氏はさらに、「しかし近年、中国経済の急成長及び一帯一路の投資掘り下げに伴い、中国の対外投資は以前の相対的にローエンドで荒加工な分野に向けるのではなく、徐々に向上を目指している。日本の東南アジアにおける長期的な投資における、黙っていても儲かる分野に一定の圧力を形成した」と続けた。
日本は東南アジアを非常に重視
東南アジアは現在も日本の重要な経済パートナーだ。日本アセアンセンターの2018年のデータによると、日本の対東南アジア諸国貿易額は25兆円にのぼり、日本の貿易総額の15%を占めている。電子機器、衣料品、木製品を例とすると、日本の東南アジア諸国から輸入する完成品は日本の完成品輸入総額の67%を占めている。日本は米国、中国、EUに続く東南アジア諸国の主な貿易相手国となっている。
中国社会科学院日本研究所の呂耀東研究員は「環球時報」に、「かつて東南アジアを侵略した第二次大戦の敗戦国である日本は当初、政府開発援助により国際的なイメージを変えようとした。そのためこれらの国においては政治問題に触れず経済のみを扱い、一貫してこのような低姿勢を保った。日本のこれらの国への投資は札束外交とも呼ばれる」と説明した。
日本の外務省が2020年に発表した資料によると、人材育成は日本・ASEAN協力の3つの新たな方向の一つだ。日本は2018年にASEANの首脳会議で目標を示し、2023年前に8万人の産業人材を育成し、デジタル経済及び「第4次産業革命」の到来に備えるとした。
呂氏は、「日本と東南アジア諸国は現在、一部の安全分野で協力している。つまり経済及び政治安全のレベルで、日本は東南アジアにおいてすでに全面的に強化しており、かつてほど単純ではなくなった。戦後日本は長年に渡り東南アジア諸国を深く耕してきた。中国が一帯一路を提唱すると、日本には中国が東南アジアのパイを奪うという心理が生じたようだ」と述べた。
しかし呂氏は、「日米同盟を背景とし、日本はインド太平洋構想に取り組むため戦略的な支柱を探す必要がある。米国、豪州、もしくはインドに完全に頼るわけにはいかず、東南アジアのフィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどの国も頼みとしなければならない」と指摘した。
日本メディアの報道によると、米国の国防総省は2019年6月に発表した「インド太平洋戦略報告書」の中で、日本側が掲げたインド太平洋という概念を受け入れると同時に、ロシア・中国・朝鮮への「抑止力」の強化にも言及し、ロシア・中国・朝鮮の包囲網の中におり地政学的な影響から逃れられない同盟国の日本を完全に売り渡した。日本政府は大国間の冷戦がヒートアップすれば、米国の同盟国で米軍が駐留する国である日本が真っ先に、北東アジア諸国の脅威にさらされることを熟知している。
対中競争の資本をASEAN10カ国に賭ける日本
東南アジア諸国の建設機械及びエネルギー材料などの分野をめぐる中日両国の競争の激化に伴い、日本企業はすでに中国企業との競争の資本をASEAN10カ国に賭けているようだ。
インドネシア・グリンドラ党の関係者は「環球時報」の取材に対して、「現状を見る限り、中日両国はインドネシアの市場で確かに駆け引きを展開している。中国の影響力は大きく資金も潤沢で余力が残されているが、日本が経済援助する製品のイメージが良く、これが立脚点になっている。中日両国のインドネシア市場における競争は将来的に、イメージと質の競争になるだろう」と述べた。
陳氏は次のように述べた。
東南アジアが米日のインド太平洋戦略の中心地域であり、中国の一帯一路の重心の所在地でもあることから、この2大戦略が重なる地域となっている。双方の戦略的なモデル転換に伴い、特に米日の中国けん制戦略のモデル転換により、重複する地域が形成される。全体的に見ると中日の東南アジアにおける競争はより複雑かつ敏感になる。中日双方の東南アジアにおける経済面の競争がより激化するだろう。また政治や安保などの考慮も加わることになる。
日本は将来的に、インフラの品質体制及びインフラの国家安全に対する長期的な影響のいわゆる「安保の角度」から、東南アジア諸国に中国からの介入を回避するよう働きかけるだろう。日本国内の今回の政局の変動、党総裁選及びその政治的な主張からも、日本の政治エリート及び戦略界の関係者がすでに米国の戦略シフトにぴったり追随していることが分かる。また日本の対中戦略も、得意とする経済分野における「経済安保戦略」による対中けん制に一層傾いている。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2021年9月9日