日本の岸田文雄首相は8日、国会の所信表明演説で内政及び外交政策に関する主張を掲げた。岸田氏は感染対策、経済振興、経済安保などの新たな政策を打ち出したが、これまでの党内及び閣僚の人事を見ると、その政策は自民党内のその他の大きな派閥勢力の影響を免れず、ゆえにこれらの主張が実行に移されるかについては今後の経過を見守る必要があると分析する声もある。

　内政では「新」を強調

　岸田氏は演説の中で、「現在の日本は依然として新型コロナウイルスの国難に見舞われており、感染対策が喫緊の課題である。日本は現在全面的に緊急事態宣言を解除したが、決して油断はできない。政府は希望者全員の新型コロナウイルスワクチンの2回の接種を進め、3回目の接種に向け十分に準備を整える」と述べた。また、「政府のこれまでの危機管理体制を評価し、指揮職能を強化し、関連法を改正し人流を抑制し医療資源を確保する。同時に国産ワクチンの研究開発と治療薬の販売の促進といった措置を通じ、政府の新型コロナウイルスに対応する危機管理能力を強化する。また政府は看護師及び介護職員の所得を増やし、コロナ禍の各業界に対する財政支援を拡大し、感染症と共存する新社会を作る」と述べた。

　岸田氏は経済面で、「新資本主義」という長期目標の達成を掲げた。岸田氏は、大胆な金融政策と柔軟な財政政策及び成長戦略の実行によりデフレ脱却に取り組み、経済をしっかり盛り上げ、財政健全化の実現に向け努めると述べた。その中心的な理念は、成長及び分配戦略により経済の好循環を実現することだ。うち「科学技術立国」「デジタル田園都市国家構想」などの内容は、経済成長戦略の主な支柱となる。

　これについて野党側は、岸田氏の「新資本主義」の構想には実質的な内容がなく、全体的な政策の方向は安倍・菅政権と比べ大きな変化がなく、容れ物が変わっただけだとしている。

　岸田氏の施政方針の中でもう一つ注目に値するのは、「新経済安保政策」だ。岸田氏は、強靭なサプライチェーンを構築し日本経済の安全を保証するため、「経済安全保障推進法」の制定を検討すると述べた。これに向け岸田内閣は経済安全保障大臣というポストを新設した。その主な任務は、「経済安全保障推進法」及び関連する国家戦略の制定だ。日本メディアの分析によると、「新経済安保政策」は重点的にエネルギー、情報通信、交通、海上物流、金融、医療などの分野から着手すると見られる。

　外交には多くの課題も

　岸田氏は外交及び安保について、日米同盟は日本の外交及び安全保障政策の軸であると強調し、「日本政府は米国、豪州、インドとの4カ国間協力を柔軟に活用し、『自由で開かれたインド太平洋戦略』の推進に取り組む」と述べた。また、「国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画などの改正に取り組み、日本のミサイル防衛能力及び海上安保能力を強化する」と表明した。

　岸田氏は対中関係について言及した際に、中国との安定的な関係の構築は両国、地域、国際社会にとって重要と強調した。「日本は一部の問題をめぐり主張すべきは主張し、中国に責任ある行動を強く求めると同時に、中国との対話を維持し、共に手を携え多くの課題に対応する」

　岸田氏は日露関係について「領土問題の解決なくして日露平和条約の締結はない。両国は首脳間の信頼関係を構築すると同時に、平和条約締結を含む日露関係の全面的な発展を目指す」と述べ、日韓関係については「韓国は日本の重要な隣国であり、健全な日韓関係を取り戻すべきだ。日本側も一貫した立場を堅持し、韓国側に適切な対策を講じるよう強く求める」と述べた。

　アナリストは次のように分析した。

　岸田氏は自民党内の外交政策が「ハト派」とされる宏池会出身であるが、自民党総裁選では党内の保守勢力に迎合するため穏健なイメージを一新し、外交・安保問題をめぐり強硬な発言をした。現在の権力分配状況を見ると、岸田氏は新内閣において菅内閣の茂木敏充外務大臣と岸信夫防衛大臣を留任とした。党内では高市早苗氏のような右翼・保守人物を重用し、外交・安保路線において安倍政権の影響を完全に払拭できなくなった。そのため岸田政権が将来的に効果的な措置を講じ、隣国との関係をしっかり改善するかについては、今後の経過を見守る必要がある。

　｢中国網日本語版(チャイナネット)｣2021年10月9日