文=呉懐中・中国社会科学院日本研究所副所長、研究院
ロシアとウクライナの衝突後、日本がいやにざわめいており、かつその矛先は大抵中国に向いている。特にバイデン米大統領の訪日とクアッド首脳会談の後、日本は外交、経済・貿易、軍事の3大分野において、段階的かつ集中的に対中戦略を打ち出している。この動きが両国関係の対抗の激化を促し、改善の余地を狭め、かつ2017年以降の改善の流れを断ち切る可能性を生むことは間違いない。日本の対中政策、ひいては国家戦略の動向が重要な岐路を迎えた。
安全路線と対中関係の懸念
そのうち特に注目・懸念されているのは、日本の軍事発展の方針転換に集中的に示されている国家戦略の変化、及びその中国への影響だ。長年の民意の誘導と世論の操作を経て、日本の保守政治集団は現在、軍事モデル転換及び発展をめぐり国内からかつてないほどの支持を集め、社会からエネルギーを得ている。戦後日本の平和的発展の路線への反発・報復が激増している。日本は今後10年に渡り、国防方針、軍事戦略、武器装備品、防衛予算などの面で、隣国が懸念する形である種の軍事的台頭を実現する可能性が高い。
現在の日本の軍事発展及びそのエネルギー(先進的な軍事力の建設、新型戦力の生成、軍事展開の調整など)のほぼすべてが、中国を念頭に置いている。日本は当然ながら一部の軍事資産を使い「北の脅威」に対応する。しかし全体的に見ると、ロシアに対しては段階的な戦術的重視であり、中国に対しては長期的な戦略的重視だ。日本は2004年版の防衛計画の大綱の中で、防衛の重心を徐々に南に移すとした。自民党は今年、新防衛大綱の中で中国を「重大な脅威」と定義するよう提案した。中日関係の30年に渡る「ポスト冷戦」が正式に終了しつつあるのかもしれない。日本保守・右翼政治勢力が「不吉な時代」の角笛を高らかに吹き鳴らしている。
この過程において、安倍晋三氏を始めとする日本保守・右翼勢力は早くから、中日には第一次世界大戦前後の英独間の構造的な矛盾に似たものがあると信じている。さらに日本の民族性や思考方法によると、大変動や混沌に直面すると往々にして遅疑逡巡するが、方向と目標が定まれば直ちに一路邁進し、内部のメカニズムでは是正・調整が困難だ。21世紀の最初の20年が、中日関係が悲劇に転落する「危機の20年」と後に解釈される可能性もあるのだ。
岸田氏と宏池会は歴史的責任感を
岸田氏の外交は現時点で、前政権を全体的に継承し、部分的に発揚している。岸田氏はリスク回避の個性、対外関係の慎重な舵取りを放棄し、対中強硬という日本の政界の全体的な風潮への追随に転じたようだ。これがその外交政策ビジョンの真の変化を意味するか、それとも「ポリコレ」への部分的な順応もしくは迎合を意味するかについては、観点が一致していない。しかし何はともあれ、その結果、現在の日本は絶えず中国対抗のカードを切っている。これはまた中日関係になかなか改善の兆しが見えず、冷え込みつつ変動している主な原因だ。
日本国内の政治に存在する2つの要素が、この局面とリスクを刺激し拡大している。まず、日本の政党政治の軟弱さと弊害だ。反中というポリコレに縛られ、岸田氏と宏池会は国内政治で絶えず保守・右翼勢力を籠絡・迎合しなければならない。歴史を振り返ると、日本の政党政治は重要な歴史の節目において何度も政治的責任を失い、歴史の試練を乗り越えられなかった。次に、ある主要政治家の無節操と責任逃れだ。これを最も良く示しているのが安倍氏だ。表と裏では態度がまったく異なり、首相在任中は実務とバランスをまだ理解していたが、退任後は中国に強硬な姿勢を示し邪魔立てをし、緊張情勢を煽ることで政治目的を達成しようとしている。
日本の行いはすでに、日本が政治の約束を守るか、政策の連続性を保てるか、誠意を持って交流するに値するかという、中国側の自信と忍耐を大幅に消耗させている。日本の中国に対する公然たる敵意、露骨な内政干渉などの行動について、中国の学術界と民間はすでに断固反対・反撃の声を上げている。日本側がこのような行動を続ければ、中日関係と東アジアの大局は保たれるだろうか。
現実主義的に考えると、日本の対外戦略の知恵(トップレベルの戦略学者である高坂正堯氏、五百籏頭眞氏らが指摘しているように)は、「米国との同盟+中国との強調」の二本柱であるべきだ。ところが現在の日本が日中協調の促進をめぐり、倦怠感と傲慢ぶりを示していることは明らかだ。今年は両国の国交正常化50周年で、岸田氏は一連の重大な意思決定に直面する。これらは日本の今後の中国との関係の基調を形成することになる。前政権及びその指導者よりも、岸田氏の外交チームが伝統的な宏池会の特徴を持つはずだと信じたい。例えば7月の参院選で政権運営の基盤を固めれば、岸田氏は対外戦略及び対中外交において大局観とバランス意識を示し、経済・国民生活及び実務協力を尊ぶべきだ。中日国交正常化50周年を契機とし政治の勇気と責任感を示し、実際の行動により自ら唱える中国との「建設的かつ安定的な関係」の発展に取り組むべきだ。
2022年という重要な年に、岸田氏が日本の対中戦略をより系統的に見直し意思決定できるか、それから自国及び地域の前途・運命に対して歴史的責任感を持てるかが明らかになる。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2022年6月9日