文= 丸紅中国会社経済調査チーム長 鈴木貴元
二十大は、小康社会実現の後、社会主義現代化という第二の目標に本格的に向かう門出である。習近平総書記就任からの過去十年では、世界貿易の下方屈折や新型コロナの中、成長モデルを調整しつつ、年平均6.6%成長を達成した。十八大で示されたイノベーション、協調、緑色、開放、シェアという新発展理念と呼ばれる成長モデルの概念は、共産党の指導とイノベーションを梃子として格差改善や環境配慮などの人民の問題を改善しようというものである。市場経済を重視しつつも、市場経済をより大きな枠組みを持つ高質量発展モデルの一部として考えている。
二十大に至る政府文書から見られる経済の大きな問題意識では、小康社会実現後の農民を中心とする低所得者の更なる生活改善(共同富裕)、そのためのイノベーション能力と効果の改善、共産党自身も含む汚職・腐敗・ガバナンスの改善の3つが最重要なものと認識されているようだ。中国の中間層人口は4億人に達しているが、これは10億人が未だ低所得に甘んじており、都市で当たり前となった高い品質の商品やサービスの購入、デジタル経済や高い教育などの恩恵が及んでいないことを意味している。また、イノベーションは、グローバル・イノベーション指数で今年11位を付けても、イノベーションが経済をけん引しきれていない。質の高いイノベーションが更に必要なことを示唆している。さらに、ガバナンスは、共産党の汚職・腐敗対策や法制度整備の中で改善をみせつつも、14億人という巨大な人口の中で安心できる経済・社会環境の建設を更に進めなければならないという認識があるものと見られる。
これからの社会主義現代化は、これら課題に共産党・国民が一緒に奮闘する過程である。高度成長から質の高い経済・社会への軟着陸の過程でもある。世界経済・社会の安定に引き続き寄与すべく、世界とも改革開放、国内国際準などの中で対話・交流を広げていってもらいたい。
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