日本にはなぜメルケル氏のような政治家がいないのか

中国網日本語版  |  2023-06-29

日本にはなぜメルケル氏のような政治家がいないのか。

タグ:外交 政治 開放 訪中 保護主義 

発信時間:2023-06-29 09:43:12 | チャイナネット | 編集者にメールを送る

文=劉迪・杏林大学総合政策学部教授

 今年出版された「安倍晋三回顧録」には、安倍氏とメルケル氏の会談の様子が記録された。安倍氏はまず、メルケル氏が頻繁に訪中しながらめったに訪日しないことに不満を漏らした。安倍氏はその後、ドイツが中国に販売したエンジンが潜水艦に使用されたことを批判した。メルケル氏はそれに動じず、安倍氏は不快感を露わにした。この描写は、日本の対中外交の側面を示しており、また「中国に対して、メルケル氏と安倍氏はなぜこれほど違ったのか」を考えさせる。

 筆者は先ほどメルケル氏の講演録「わたしの信仰」を読み返した。本書はメルケル氏の90年代から2017年までの講演を収録。メルケル氏は、保護主義への対応に言及した際に中国の指導者の発言を引用し、「保護主義は自分を暗い部屋に閉じ込めるようなもので、雨風を防げるようだが、日差しと空気からも隔絶される」と述べた。メルケル氏は、この言葉を非常に気に入っていると話し、「大変革を前にした人類は暗い部屋に閉じこもるのではなく、開放的な心を持ち、手を携え危機に対応するべきだ」と強調した。

 メルケル氏は政治家になる前は科学者で、その前は牧師の娘だった。安倍氏は著書「美しい国へ」の中で祖父について記し、自身が早くから保守主義思想を持っていたことを明かした。メルケル氏と安倍氏の家庭とその学識は、中国に対する観点が異なった理由かもしれない。

 岸田文雄首相は昨年の年頭所感で、「新時代リアリズム外交」という原則を初めて掲げた。これは「普遍的価値を重視する」「地球規模の課題に取り組む」「国民の命と暮らしを断固として守り抜く」ということだ。これらの多くが安倍氏の外交を継承していることは明らかだ。岸田氏は安倍政権で外相を4年7カ月務めており、安倍氏の「価値観外交」の貫徹に全力を注いだ。

 今年の日本の外交青書は、中国を日本の「これまでにない最大の戦略的な挑戦」とした。日本の一部の政治家は絶えず「台湾有事は日本有事」と喧伝している。これらの宣伝はすでに「危機感」の範疇を超えており、中日二国間関係を大きく破壊している。

 日本メディアは時に「外交の岸田」と揶揄する。しかし岸田氏は長期的に外務大臣に就任し、外務官僚機構のルールを熟知している。また岸田氏は外相就任中にグローバルな政治・外交の人脈を構築した。そのため岸田氏は日本のその他の政治家よりも、外務官僚機構を操縦・制御し、その外交の思考を貫徹する術を心得ている。

 今世紀の20年代に入り、世界で保護貿易が横行し、「自国中心主義」とポピュリズムが台頭している。これには先進国の貧富の格差の拡大、長期的な景気低迷という背景がある。西側諸国の政治家は選挙の需要により、対外政策で「敵を作る外交」を展開している。日本はその典型的な例だ。ところが今日は地球環境の問題が依然として深刻で、人工知能が急速に発展し、人類社会が数々の挑戦に直面している。これらの人類共通の危機と課題に対応するため、全人類が団結する必要がある。今年の3月以降、ティム・クック氏、イーロン・マスク氏、ビル・ゲイツ氏ら技術界の大物が相次いで訪中した。彼らには、技術進歩が人類社会の団結を促進するという共通の信念がある。彼らはメルケル氏と同じく、風雨に見舞われた際に暗い部屋に閉じこもるのではなく、勇敢に対応する。

「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年6月28日

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