日本政府は、多くの国と同地域の漁業団体の強い反対を押し切り、今夏に福島第一原子力発電所の放射能汚染水を太平洋に放出することを堅持している。これに対し、香港紙「南華早報」はこのほど、脆弱な海洋が福島の放射能汚染水の廃棄場になるべきではないと報じ、少量の汚染物質でも魚や人類の体内に蓄積される可能性があり、脆弱な海洋生態系が破壊されるべきではないとの考えを示した。
日本政府は、多核種除去設備(ALPS)によりトリチウム以外の62種類の放射性物質が規制基準を下回るまで浄化処理されたと主張している。しかし、2011年3月の福島原発事故の発生後、130万トン以上の汚染水が約1000個のステンレス鋼タンクに貯蔵されている。放射能汚染水に含まれる炭素-14、ストロンチウム-90、セシウム-137、トリチウムなどの放射性元素は、人類の健康に潜在的な影響を与えると考えられている。放射性核種の半減期はそれぞれ異なり、2011年以来崩壊しているものもあるが、半減期が5000年を超える炭素-14のようなものもある。つまり、これらの物質は私たちの後の多くの世代が生きる環境においても放射性を持ち続けることを意味している。
福島の放射能汚染水の海洋放出はおよそ30年かかると予想され、非常に大規模かつ長期的なプロセスとなる。原発事故の発生から12年以上経たなければ放出することができず、完全に信頼できる工事と自然に基づいた解決策を選ばなければならない。日本の放射能汚染水の処理方法と海洋での希釈方法は「安全」だと一部の科学者は考えているが、他の多くの科学者は依然として懸念を抱いている。香港特別行政区政府は、日本の海洋放出計画のリスク性を引き続き評価し、日本が放出を開始した場合、福島をはじめとする日本の他の県からの海産物に対しても輸入制限を実施すると表明した。
ハワイ大学マノア校のケバロ海洋実験室主任のロバート・リッチモンド(Robert H.Richmond)氏は、太平洋島国フォーラム(PIF)が任命した国際科学者の一人である。彼は今年初め、他の学者と共に、海洋生態系とそれに依存する人々にとって十分な安全性が確保されるかどうかを確認できないため、日本に放射能汚染水の海洋放出計画を延期するよう提案した。
同記事の筆者は、人々は次のいくつかの重要な要素を認識しなければならないと述べた。まず、海洋には物理的な境界がなく、1つの海域に放出された汚染物は他の海域にも拡散していくこと。次に、いかなる水体でも、例えば海洋であっても、汚染を薄める能力には限界があること。更に、海には、汚染された水をすぐにきれいな水に変える不思議な力がないこと。汚染物質を希釈するにはかなり時間がかかり、福島の場合、汚染物質の放射性は数十年間にわたり放出され続けていくと見られている。
科学者たちはまた、水生食物連鎖の下層に位置するプランクトンや他の海洋の微生物が放射性核種を捕捉する可能性があることも懸念している。これは、放射性核種が最終的に魚類や海洋哺乳動物の体内に蓄積される可能性があることを意味している。
米国立科学アカデミー誌(National Academy of Sciences Journal)で発表された研究報告によると、福島原発事故発生からわずか5カ月後、米カリフォルニア州サンディエゴのあたりで捕獲された15匹のマグロの体内から、微量のセシウム137とセシウム134が検出された。海産物は人類にとってありふれた食物であるため、その中から発見された汚染物が非常に微量であっても、私たちの体内に蓄積される危険性を排除することは難しい。
人々は再び、政治指導者の利己主義と短視を目の当たりにしていると同記事は指摘した。海は誰かやどこかの国のゴミ捨て場ではなく、食物を提供し、二酸化炭素を吸収し、経済成長を維持する貴重な資源であるため、脆弱な海洋生態系が脅かされないようにしていくことは、各国が守らなければならない責任である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」2023年7月20日