日中社会学会会長 陳立行
1970年代以降、日本の国会では社会民主主義勢力が躍進した。保守勢力は譲歩を迫られ、完全医療保険制度と年金制度が実現されることになった。1990年代に入ると介護保険も実施された。社会福祉制度の整備により、安穏な国民生活環境が実現された。しかしその一方で、東アジアの伝統的な家庭観念とは異なる価値観が生じることになった。
戦後日本では、長男が一家の遺産を相続するという法律が廃止された。1947年より、子女均等相続法が実施されることになったのだ。長男が家の財産を継承するという習慣は、鎌倉時代にさかのぼる。長男以外の子供は、結婚して自ら家庭を持った後は、経済的には独立独歩となる。この法律の下では、父母の財産が多かれ少なかれ、両親の面倒を見るのは長男一家の責任だった。この習慣は現在でも多くの家庭で続いている。1947年に子女均等相続法が実施されたとはいえ、1980年代になるまで、多くの女性が長男との結婚を嫌がったものである。
21世紀の今日、日本の農村では専業農民がすっかり減った。長男の結婚は依然として難題となっている。現在、もし子供と同居している老人がいたら、その大多数が長男または長女である。親が自力で動けなくなった場合、同居している長男または長女が親の面倒を見ることになり、他の子供たちは無関係を決め込む。極端な場合、何年も会いに来ないことすらある。しかし親が死去するや、突然戻ってきて遺産相続を主張するのだ。もし長男がそれに同意しない場合、他の子供たちは法廷で決着させる手段をとる。親が直々に書いた遺書がない限り、残された遺産は法律に基づき等分で分配される。最近、数ある訴訟案件のうち、遺産相続に関する訴訟数が全訴訟の中でトップに躍り出た。多くの家庭では、兄弟姉妹が成人した後に、お互いの関係は疎遠になりがちである。裁判沙汰になった後ではなおさら「絶縁」関係になってしまう。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年8月23日