フランス料理やイタリアのコーヒー、アメリカのジーンズ―これら欧米諸国の「舶来品」は日本で進化を遂げた。「日本製」の製品は、本場の趣向を残しつつも、日本人のスタイルを取り入れ、本場を超えた新たな商品へと進化している。
細部にこだわる
田中勝幸さんはアメリカ・ニューヨークで18年間生活し、コーヒーの制作技術を学んだ。田中さんは日本に戻った後、東京で「ベア・ポンド・エスプレッソ」というコーヒー店を開いた。
田中さんは午前の特定の時間にしかエスプレッソを出さない。田中さんによると、電力使用のピーク時に入ると電圧が低くなり、理想的なコーヒーができないのだという。
「ベア・ポンド・エスプレッソ」の8号店には、最先端のコーヒーマシンと浄水器が並んでいるが、エスプレッソとエスプレッソから作られるカプチーノは提供していない。同店の店員に聞いたところ、現段階では店長(田中さん)にカフェラテとアメリカンしか作ることを許されていないそうだ。
「1年から2年ほど修行しないと、お客さんにブラックコーヒーを出すことすら許されない。カプチーノを出すにはさらに1年修行しないといけない。」この若い店員はこのように話した。
時間がコーヒーの味になって表れる。「舶来品」本場の趣を出すには、細部にこだわることが大切だ。
京都にあるスペイン料理店では、店全てのものにスペインのものが使われている。使い捨ての紙ナプキンでさえ、スペイン製だ。
スペインから来たお客さんは、この店の店長がスペイン製のナプキンを使っているのを見て、「馬鹿げている」と驚いた様子だった。しかし、店長は、お客さんにスペインの雰囲気を味わってもらうのが目的で、お客さんが喜ぶかどうかは関係ない。
東京の銀座にはバーが100軒以上ある。そのなかでも、「スタア・バー」の店長兼バーテンダーを務める岸久さんが作るカクテルは絶品である。
岸さんは国内外のカクテルコンペティションで数々の賞を受賞している。岸さんの作るマンハッタンは有名である。米紙ウォールストリートジャーナルの記者は、岸さんの作るマンハッタンを「口当たりが爽やかで、甘みと苦みのバランスが最高だ」と評した。
それだけの腕を持っているにもかかわらず、岸さんは「まだ勉強することが多い」と話す。同記者によると、日本には特色をもつバーがたくさんあるが、岸さんのように技術を追求し続ける人は珍しいという。