さらに、神舟、嫦娥計画に代表される宇宙計画事業の進展や高速鉄道(日本の新幹線に相当)網の整備などが、10年間の輝かしい成果でしょう。今年6月には、神舟9号(初の女性飛行士が搭乗)が打ち上げられ、天宮1号とのドッキングに成功しました。この快挙を米誌『アトランティック・マンスリー(Atlantic Monthly) 』が「胡錦濤的肯尼迪時刻」(胡錦濤のケネディ・タイム)(注1)と題して論じたとを、新華ネット(2012年6月24日)が報じています。その時期については、まだ未定ですが、中国が目指す有人月面着陸が視野に入ってきたようです。筆者が北京に赴任した2001年当時、海外からの技術導入による建設が検討されていた高速鉄道が、わずか10年足らずの間に独自開発され、海外で建設を請負うまでになると想像した人は皆無でした。
10年間は、「輝かしい成果」ばかりではありません。汶川地震、甘粛舟曲土石流災害などの自然大災害、食品安全、環境保全における重大な事件・事故の発生、そして、2003年のSARS(新型肺炎)禍など未曾有と言える事態にも見舞われています。さらに、世界的な経済危機(米国発金融危機、EU債務危機)にも直面するなど、中国経済が大きな試練に直面した10年でもありました。
今年7月、党中央が開催した「党外人士座談会」(超党派座談会)で胡錦濤国家主席は今年下半期に重点的に取り組む経済活動として6点(経済のマクロコントロールの改善、農業の近代化、経済発展パターンの転換、改革開放の推進、民生の保障・改善、経済リスクの回避)を挙げています。これまでの10年間の総括であるとともに、次世代に託す国家運営の要点を披歴したとも読めます。