収入分配改革における両者の違いについては、次のように述べている。第一に、日本が1960年に国民所得倍増計画をスタートさせた際、人口ボーナスの状態には達していなかった(つまり、この後の段階において労働市場に参入する人口は継続的な伸びを見せた)。中国の現状は違う。人口ボーナスは間もなく過ぎ去り、2015年には中国の労働力人口が総人口に占める割合はピークに達するとの試算がある。それは、これから労働者たちにのしかかる負担がどんどん重くなることを意味している。なぜなら、退職保障等の負担は、その大部分が労働人口によって支えられているものだからである。この点で、中国の政策は日本より出遅れたと言えよう。また、それにより、その難易度も高くなっている。
第二に、直面する国際環境が違う。1960年代といえば、世界的資本主義の急成長期であり、当時の米国も自由貿易を提唱し、国際貨幣体系も固定相場制のブレトン・ウッズ体制だった。これにより、当時の日本は国内外市場の需要を十分に利用し、自国の工業を発展させることができた。日本の国民所得倍増計画の実施は日本に多額の貿易赤字をもたらすことはなく、逆に1970年以降の黒字が拡大した。これは、当時の国際経済環境があってこその結果である。一方で、中国が現在置かれている国際経済環境には厳しいものがある。世界経済がみな活力を失い、貿易保護主義が各国で頭をもたげ、人民元の切り上げ圧力も依然大きく、中国が外需を利用してさらに成長を遂げることは非常に難しくなっている。
第三に、中国の今の都市化レベル(51%)は日本の1960年の65%に及ばず、中国は都市化レベルを高めることで、都市部と農村の収入格差を縮小するだろう。
夏楽氏は言う。「いずれにせよ、中国には巨大な潜在能力が眠っている。だが、今中国が直面している状況は、関連制度や政策の策定に大きな難題を突きつけている。」
「中国網日本語版(チャイナネット)」2013年3月1日