オバマ政権の下で公表された「核状況報告書」は全世界の専門家の強い関心を呼んだ。平和を熱愛する人びとはオバマ氏が、小ブッシュ氏の「単独主義」といった武力至上の考え方から抜け出すことを願っている。「核のない世界」という考えを打ち出したことで、オバマ大統領はノーベル平和賞を受賞した。
先ごろ米国防総省が公表した「核状況報告書」は、「核ゼロの世界」という概念を推し進めたものなのか。フランスの戦略分析研究所長で、新ソルボンヌ大学戦略問題研究所のフランソワ・ジェレー所長は報告書の持つ深みを解読することで、核ゼロの背後にある理論は一体どこにあるのか、と考えた。「文匯報」が伝えた。
核不拡散は宣伝に過ぎない
内容から見ると、ジェレー所長は3つの要点を理解する必要があると考えている。仮に米国はその核兵器を削減する計画だとすれば、その趣旨が核不拡散にある場合、それは一種の「イデオロギーの宣伝」に過ぎず、軍事戦略の改変ではない。報告書における真の政治的政策決定は、「核兵器の役割を減らす」ことにある。だがこれは、逆に全世界の軍事状況のアンバランスをもたらす可能性が非常に高い。ジェレー所長は「5200個の核弾頭と1500個の核弾頭には、実質的な違いはない」「米国の核の三大優位は長距離大陸弾道弾、原子力潜水艦と長距離戦略爆撃機B2にあり、仮に米国がそのうちの1つを放棄してこそ、米国の軍事戦略の修正となる」と指摘する。これが第1だ。
第2は、米国が「核不拡散条約を順守する非核保有国」に対し核兵器を使用しないと確約したことで、実際、核兵器を使用するかどうかの最終決定権が改めて米国の手中に握られたことだ。国際条約の含意は、共同の義務の順守と負担を各側が約束することにある。だが、米国が「核不拡散を順守するかどうか」を核兵器使用の先決条件したことで、国際条約はその相応の役割を失った。
第3は、報告書は核兵器の使用を制限し、米国が核兵器を使用しないのは非核保有国に対してであり、生物・化学兵器や宇宙攻撃にさらされようと、つまり、核兵器は核保有国を反撃するだけだ、と称していることだ。だが同時に、米国はむしろ「核兵器の先制不使用」については確約しておらず、これも「非常に奇怪なこと」である。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2010年4月13日