1年以上行方不明になっていたイランの核科学者シャハラム・アミリ氏が13日、在米パキスタン大使館に突然姿を現わし、保護を求めた。イラン外務省は14日、アミリ氏が15日未明に航空機でテヘランに到着することを明らかにした。イランのニューステレビ局はウェブサイトで「拉致された科学者が祖国に戻り、家族と再会」との見出しで、アミリ氏の帰国をいち早く報道した。不可解極まる「失踪事件」の謎は、本人の出現と帰国によっても解けないようだ。
■イランと米国は互いに主張を譲らず
イランと米国は1年以上のアミリ氏失踪の内情について互いに主張を譲っていない。イラン政府側は一貫して「米国人による拉致」と見なし、米国がアミリ氏を拘禁し、拷問を加えたと強く主張。一方米政府側は「アミリ氏は自分の意思で米国に身を寄せた」としている。
クリントン米国務長官は13日、イラクのジバリ外相との共同会見で、いくらか重々しい表情で「アミリ氏は自らの意思で米国に滞在していた。入国も出国も自由だ」と表明した。
■よりばつが悪いのはどちらか
米メディアは、今回の事件は米国・イラン両政府にとってばつの悪い事態だと指摘する。いくつかの米メディアが指摘するように、「拉致」であれ「自分の意思で身を寄せた」のであれ、アミリ氏が保護を求める形で帰国したことは、米国の情報機関にとって決して面目の立つことではない。
あるアナリストは、本当に「自分の意思で身を寄せた」のだとしても、その前に米国情報機関の「洗脳」を受けたはずだと指摘する。そうでなければ、なぜ今になって在米パキスタン大使館に保護を求める必要があるだろうか。また「拉致」であれ「亡命」であれ、イランの科学者が失踪後に米国に現れたこと自体、道理に合わない。
一方で、イランはアミリ氏の帰国を「大勝利」と見なしているが、イランの核開発計画の秘密はすでに米側に伝わっている可能性が高いとの指摘もある。米情報機関職員は「アミリ氏は、イランの多くの核施設で放射能の測定を担当していた。施設内の職員の安全を確保するためだ。このため米国はアミリ氏を、イランの核開発計画に関する重要な情報源と見なしている」と指摘する。
「人民網日本語版」2010年7月15日