クリントン米国務長官が先日、パキスタンとアフガニスタンを訪問した。クリントン長官は19日、イスラマバードで総額5億ドルのパキスタン支援計画を発表。パキスタンとの第2回戦略対話にも出席した。テロ対策の強化をパキスタン側に働きかけ、米国のアフガン撤退に向けた環境を整えることが大きな目的だ。だが、米国とパキスタンにはそれぞれ政策的思惑があり、対話によって溝を埋めることは難しかった。
オバマ米大統領は昨年3月、対アフガニスタン・パキスタン新戦略を打ち出した。その重点の1つは、パキスタンの対テロ能力の助けを借りて、アフガン戦争終結に向けた環境を整えることだ。パキスタン側からの協力取りつけと、パキスタンへの影響力の強化のため、米国はF16戦闘機の提供を再開し、巨額の経済援助も行っている。米議会は昨年、今後5年間で総額75億ドルを提供する対パキスタン包括支援計画を可決した。米国の軍・政府高官は最近頻繁にパキスタンを訪れ、印パの緊張を緩和させることで、パキスタンが西部のテロ対策に専念できるようにし向けている。
米同時多発テロの後、米国はパキスタンを対テロの重要な同盟国としたが、戦火はアフガニスタン国内に限られていた。一方、オバマ大統領の新戦略は、パキスタンに連邦直轄部族地域(FATA)内の武装勢力やテロ勢力を掃討させることを意図しており、実質的にパキスタンを直接の対テロの戦場とするものだ。パキスタンではテロが頻発し、数百万人の難民もいることから、パキスタン政府・軍は大規模な軍事行動の発動において大きな国内圧力を抱えてきた。
クリントン長官がアフガン問題国際会議の前にパキスタンを訪問した目的は、「追加の対テロ措置」を含めテロ対策を強化するようパキスタン側を促すとともに、経済支援によって米国への不信感を払拭し、パキスタン民衆の支持を獲得することにあった。だが戦略面や多くの具体的問題において両国間に溝があることは明らかだった。
米国は南アジアに独自の戦略的利益を有し、常に印パ間を揺れ動き続けてきた。パキスタンの世論は、米国はグローバルな戦略的利益からインドを潜在的な戦略パートナーとしており、全般的に「インド重視・パキスタン軽視」に傾いていると見ている。つまり、パキスタンを対テロに巻き込むのは便宜的な策に過ぎず、「対テロ同盟」の地位はインドの「グローバル戦略パートナー」の地位よりも遥かに低い。そしてこれは米印原子力協力や戦略対話から明らかだという考えだ。
対テロにおける米パの着眼点も同じではない。パキスタンは友好的なアフガニスタンを必要としているが、この点において米国はパキスタン側を満足させることができていない。アフガニスタンのタリバン武装勢力に平和プロセスへの参加を促すうえで、米国はアフガニスタンが再びアルカイダの潜伏地とならないことを、パキスタンはアフガニスタン問題における自国の発言力を高めることを望んでいる。
ソ連のアフガン侵攻中、パキスタンは米国に多くの手助けをした。冷戦後、米国はアフガニスタンという「非戦略重点地区」から撤退。パキスタンは一連の負担を背負うこととなった。アフガン難民だけでも数百万人に達するのだ。パキスタン人の多くは、アフガニスタンのテロ問題の解決後、米国が同じような行動をとり、再びパキスタンに混乱を残していくことを懸念している。
「人民網日本語版」2010年7月23日