キッシンジャー氏は異変にも慌てず、大をつかみ小を放つ能力に長け、一時、一事のために中米関係発展への決意を失うことはない。現象を通して本質を見、内政を通じて外交を見ることができる。「中国脅威論」が方々から起き、「中国強勢論」がはびこる中、キッシンジャー氏は「米中間の決定的な競争は軍事競争ではなく、経済競争、社会競争だろう」「米国が競争力を高めるには自らを頼みとすべきで、中国に肩代わりをさせるべきではない」と指摘する。これらの論断は中国の発展をめぐるまことしやかな話の急所を突いていると言えよう。
さらに得難く尊敬に値することに、キッシンジャー氏は時代と共に進化し、たゆまず知識を新たにし、視野を調整し、観念を改め、対策を練ることができる。『中国論』を書き上げた時点ですでに88歳近くの高齢だったが、体は老いても心は老いず、活力ある思考を保っている。近年の中米関係の起伏と中国外交の新たな変化に対して、キッシンジャー氏は「ある種の困惑」を抱いていることも隠さない。キッシンジャー氏は『不機嫌な中国・中国が世界を思いどおりに動かす日』『中国の夢』を読み、新時代の中国の民族主義感情を理解しようとしている。中国高官の長文を読み、中米関係の推進と平和的発展路線の堅持への中国政府の決意と意志を把握すべく努力している。20世紀の英独対立について勉強し直し、新時代の中米関係のために新たな枠組みを模索している。キッシンジャー氏の打ち出した「中米共同進化」論と「太平洋共同体」構築構想は政界と学界から注目されている。
キッシンジャー氏は中米関係発展の道程に参与し、推進し、その中で中国に対する理解を深め続けてきた。『中国論』の最後では「米中が世界を揺るがすだけではなく、一致協力して世界を建設することができたら、どれほど高い頂上に達することか!」と記している。実際、国交樹立以前から風雨の中を前進してきた中米関係は、すでに一つ、また一つと高い峰を越えてきた。次の峰を越えることは、中米両国民、さらには世界各国民の期待するところであり、時代の大きな趨勢にも合致するものだ。これを達成するためには、中米両国が時代と共に進化し、相互認識を深めることが間違いなく必要だ。
「人民網日本語版」2011年8月5日