70歳を超える成都在住の元教師、廖世華さんは家族で唯一健在の成都大爆撃の被害者であり、生存者だ。その廖さんは9月27日に行われる「成都大爆撃対日民間賠償請求訴訟」の民間損害賠償案の3審に出廷するため、1カ月後に日本を訪問する。重慶大爆撃訴訟裁判はこれで19回目。廖さんのほかに、もう一人の被害者の達朋芳さんも出廷する予定。
◇家族で大爆撃の体験者は廖さんだけに
数十年前の大爆撃のことを廖さんはまだ覚えている。防空警報が鳴った後、妊娠3カ月だった姉は廖さんを連れて永陵路近くの木の下に隠れた。母は兄と共に川辺に隠れた。廖さんは怖くなって駆け出そうとしたが、姉に手を引っ張られ地面に押さえつけられた。そのとき、爆弾が近くで鳴った。姉は腕をけがし、服が赤い血で染まっていた。その爆撃で廖さんの姉は流産した。兄は爆弾の破片が腹部に刺さり、病院に搬送されたがまもなく死亡した。
この家族の痛みを廖さんは片時も忘れることが出来ない。時は流れ、当時の大爆撃を経験した家族は一人また一人とこの世を去り、今健在なのは彼女だけとなった。「私がこの世を去るときに、この歴史があやふやになってはいけない」。
廖さんは日本を訪問して出廷し、陳述で当時のこの血に染まった歴史を多くの人に理解してもらい、若くして命を落とした兄に報いたいと思っている。これから彼女がいなくなっても、彼女の子息がこの裁判を続けるつもりだ。
◇爆撃で障碍を負った70年