確かに米国ではNATOに失望を感じている人が少なからずいる。だがその矛先の多くは「軍事上のNATO」に向けられている。NATOは事実上、「軍事上のNATO」と「政治上のNATO」の結合体だ。この同盟において欧米は肩を並べて戦う戦友であると同時に、志を同じくするパートナーでもある。冷戦中、NATOの主要任務はソ連の軍事的拡張への対応であり、NATO内での欧米の協力は自ずと軍事的団結が第一となっていた。だが冷戦終結後は政治協力の重要性が増した。英誌エコノミストが指摘したように「オバマ政権にとって、危険と試練の不確定な世界において、同じ価値観を持つ欧州は依然最も信頼できる友人」なのだ。
同様に欧州も、NATOがなければ米国との多国間協力の重要な枠組みを失ってしまう。欧州はNATOを通じて直接米国に影響を及ぼすことができる。サルコジ仏大統領が就任後にNATO復帰を推し進めたのも、米国への効果的な影響力の確保が重要な動機だ。冷戦の暗い影はとうに失せたが、欧州は依然NATOの集団防衛機能を手放さずしっかりと握っている。フランスやドイツといった西欧諸国にとっては、ロシアはすでに現実的脅威ではないものの、NATOは「安全保障上の保険」となる。中・東欧のNATO新加盟国は、なおさら強くこれを求めている。欧州の多くの国々は安全保障と戦略において依然米国に強く依存していると言える。
世界が景気後退、西アジア・北アフリカ情勢の動揺、気候変動、核拡散などの試練に直面する中、米英およびその欧州の同盟国は依然として「リーダーシップ」を発揮しようとしている。オバマ大統領自身も今年の訪英時に「衰退へ向かう米欧」という見解に強く反駁し、米英およびその欧州の同盟国が多くの問題において依然「グローバルな行動の最大の推進力」であることを強調した。「リーダーシップ」を発揮する重要な枠組みであるNATOが、内部の言い争いによって崩壊することはあり得ない。
「人民網日本語版」2011年8月19日