冷戦終結後、アジアの戦略環境は大きく改善、中国とASEAN諸国との間には非常に強い信頼・友好関係が築かれ、外界でも広く賞賛を得ている。しかし、ここ最近、米国のアジア太平洋地域「回帰」に伴い、ASEANの対中姿勢や行動に、微妙な変化が出てきている。
「口論による協力関係の破壊」や「猜疑心による友情の軽薄化」が続けば、ASEANは必ず現有の発展軌道から逸脱し、中国とASEANの協力体制を損なうだけでなく、アジア地域一体化にもマイナスの影響を与えることになるだろう。「アジア世紀」も外部勢力により、アジア各国間の混乱と引きずり合いの中、最終的に「アジア悲劇」と化してしまうだろう。
ASEAN内部の主な問題点は以下の3つである。まず、もともと内部における調和能力が不足しているところに、その拡大により更にその内部調和と利益整合を難しいものにしてしまったことである。ASEANは内部加盟国間の領土トラブルや武力衝突などの問題解決において、外界の期待する役割を果たせていない。加盟国の意見はてんでバラバラ、更に、それぞれが「国家利益第一」主義に走り、一体化の意識が薄く、団結力を発揮する協調性に乏しい状態だ。
2つ目の問題は、ASEANの中核指導力が弱まっていることである。ここ数年、リークアンユー、マハティール・ビン・モハマド、スハルトのような威信ある優れたリーダーがおらず、衆望を担う指導者組織も存在していない。