3つ目の問題は、ASEAN加盟国はそれぞれの理想を抱く、いわゆる「同床異夢」の状態で、ASEAN発展に専念しているわけではない。伝統的なシンガポール、マレーシア、インドネシアの「トロイカ」の中で、ASEANに強い熱意を持っているのはシンガポールだけで、マレーシアはマハティール・ビン・モハマド前首相離任後、ASEANへの興味が薄れ、インドネシアはG20加盟後、ASEAN熱は冷めたものの、ASEANリーダーとしての「政治資本」は必要なため、ASEAN解散は困るというジレンマを抱え、その態度は曖昧なものとなっている。「新参者」のベトナムは実に日和見主義者であり、ASEANを国家利益及び大国政治抱負を実現するためのツールと見なしてはいるものの、実際には米国、インド、ロシアなどの大国と友好関係を築き、その中で、「バランス・オブ・パワー(勢力均衡)」役を担うことに対し、強い関心を抱いている。
独立自主の固持、発展への集中力、大国との安定的関係の維持なくして、ASEAN成功は語れない。過去10年間におけるASEANと諸大国の関係の中で、最も成功したのが中国との関係である。しかし、最近のASEANによる一連の行動は、外界に消極的なシグナルを発し、中国に対する「危険なバランス・オブ・パワーゲーム」が始まったことを示している。この主体的且つ急激な戦略調整により、ASEANが長い間回避してきた「中米究極の選択」の戦略苦境が見え隠れし始めている。
もし、ASEANが内部の団結を維持できず、外部の挑発に乗って「バランス・オブ・パワーゲーム」に介入すれば、ASEAN分裂か、区域外の某大国の従属国と化すか、大国間トラブルの犠牲品となる等のリスクが生じるだろう。ASEANの政治エリートたちは真面目に反省し、改めて政策を選択する時期に直面しているといえる。
(著者:中国人民大学国際関係学院金燦栄副院長、中国現代国際関係研究院董春嶺研究者)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2011年12月4日