中国とロシアは19日に国連安全保障理事会でシリア関連決議案に拒否権を行使したことで、西側メディアの集中砲火を浴びた。シリア情勢をめぐり中国に向けられる米欧の圧力は最近、南中国海での米国の「スマートパワー外交」によるものよりもさらに凄まじい勢いを呈している。(文:単仁平・環球時報論説員。環球時報掲載)
米国は中東政策において民主と人道主義の金看板を掲げているが、その核心的目標は米国と西側の地政学的利益にある。一方、中国のシリア政策は一種の堅守であり、その守っているものは中国外交の原則であり、世界が重んじるべき道理の譲れぬ一線でもある。
西側の政治家達はひたすら中露のやり方を「誤った選択」と主張し、全世界の世論に影響を与え、中露を孤立させようと企てている。中国人は「中国が拒否権を投じたのはアサド政権を守るためであり、シリア人民と対立する側に立つもの」との彼らの嘘に決して騙されてはならない。
中国が拒否権を行使して反対したのは、国連憲章第7章を援用して安保理がシリア情勢への軍事介入に道を開くことだ。中国はシリアの衝突各方面のどの側につくかを安保理が公然と選ぶことにも反対し、シリア人民自らの交渉による政治解決を求めた。西側に世界の転覆させたい政権を勝手に転覆させないためには、このように真っ向から向き合わなければならない。
ソフトパワーで絶対的優勢にある西側が中露に集中砲火を浴びせるのは極めて容易で、一定の成果を上げるのも難しくはない。だが中露に対して実際の報復に出る力は彼らにはない。行き過ぎた言葉や汚い言葉で中露に怒りをぶちまけることしかできないのだ。
中国は現在、大国化したゆえに風当たりが強くなり、国際政治の激しい闘争の矢面に立たされることが増えている。われわれが今後耐えることになる西側政治・世論の圧力は、われわれにとって不快なものである可能性が高いが、泰然として向き合う他に選択肢はない。
中国の最大の力の源泉は国内の団結だ。中国のような大きな規模をもってすれば、中国社会が団結して1つの外交政策を支持するだけで、好き勝手に打ち破ることのできない強さとなる。世界のいかなる勢力も一定の尊重をせざるを得ない。
シリア問題において、中国の民間に対する西側の態度には誤った判断がある。彼らは自らの喧伝する「ユニバーサリズム」によって中国の民間に十分に影響を与えており、さらに中国の外交姿勢の不動性にも影響を与えられると考えている。だがそれは間違いだ。大多数の中国人はそんなに騙されやすくはない。西側が何かといえば小国に軍事介入することに、みな強い反感を抱いているのだ。
西側のシリア政策を支持するウェイボー(中国版ツイッター「微博」)上の一部の声を大多数の中国人の見解と思い込む西側の無邪気な外交官や記者によく出くわすが、彼らはまず自らを騙し、次に世論も騙しているのだ。
だが大国間の政治的角逐が激しさを増し、個人が国の重大事項に対して世論面で参画することも容易になった今日、世論における国家と個人との位置関係には微妙な変化が蓄積し続けている。ある種の世論が国に影響を与える方法が増えている。しかもそれはしばしば思いがけない形で、必ずしも多数意見ではないのに、技術的手段を含む様々な方法によって影響力が拡大される。
国の外交政策に対する中国社会の姿勢は真実を反映したものであるべきだし、その真実性が保証されたものであるべきだ。これは中国のインターネットが成熟し続けることの必要性や、各種世論プラットフォームの総合的発展の必要性など一連の問題に関わってくる。
外交は相当高度の専門性を持つため、民衆が具体的な外交政策について毎回技術面で理解することが困難なのは明らかだ。このため国の具体的な外交姿勢・行動について政府に高度の権限を与えなければならない。これには国益について世論が十分な認識と理解を持つことが必要だ。この点を確保するためには政府が高い信頼性を保つことが極めて重要だ。
西側は現在、政府の信頼性の面で中国にいくつかの問題が生じたタイミングを利用して、「西側諸国の政府が最も責任ある政府で、西側に追随することが『未来の選択』だ」との考えを懸命に中国世論に吹き込もうとしている。
西側はいつも一部の中国人を騙すことができるが、大多数の中国人を騙すのは不可能だ。西側が追求しているのは自らの利益であり、真に気遣っているのは決して中国人の幸せではなく、中国人のことを気遣っているポーズを取っているだけだからだ。そして不誠実なポーズは長続きせず、いずれ自らのあからさまな利益によってひっくり返されるだろう。
「人民網日本語版」2012年7月23日