(二)被疑者、被告人の弁護権を保障する
中国の憲法に規定された弁護権を着実に実行するために確立された弁護制度は、中国の刑事訴訟の基本制度の一つであり、国の生命、自由などの人権に対する尊重を示すものである。近年、中国は弁護制度を改革、整備し、かつての司法実践の中での「懲罰を重んじ、保護を軽んじる」といった観念を改め、弁護制度の人権保障に対する役割を積極的に生かすようにしている。 被疑者、被告人にはただちに弁護を保障する。中国が1979年に制定した刑事訴訟法の規定では、被告人は法院での審判段階でしか弁護人を委託する権利がなかった。1996年に改正された刑事訴訟法では、被疑者は捜査段階から弁護士を呼んで法律上の援助を得ることができ、案件捜査が終わり検察機関に送検された後は弁護人を委託する権利をもつとなっている。2012年に改正された刑事訴訟法ではいっそう明確に、被疑者は捜査機関で最初の尋問を受けたか、あるいは強制措置をとられたその日から弁護人を委託する権利を持ち、被告人は随時弁護人を委託する権利をもつ、と規定した。被疑者、被告人が勾留期間中に弁護人を委託することを求めた場合、人民法院、人民検察院、公安機関はただちにその要求を伝達すべきであり、被疑者、被告人の後見人や近親者も本人に代わって弁護人を委託することができる。 法律援助の範囲を拡大する。被疑者、被告人の弁護権およびその他の権利をより保障するため、2012年に改正された刑事訴訟法は、刑事訴訟における法律援助の適用範囲を、審判段階から捜査、審査起訴の段階にまで拡大し、また法律援助の対象者の範囲も拡大した。被疑者、被告人が盲人、聾唖者、未成年者、物事の識別能力あるいは行為制御能力を完全には失っていない精神障害者である場合、および無期懲役、死刑判決の可能性がある場合で、弁護人を委託していない者には、人民法院、人民検察院、公安機関は法律援助機構に通知して、弁護士を派遣し弁護させるようにしなければならない。 証人が出廷し証言する義務を強化する。証人出廷は法廷審理の質にとってきわめて重要である。証人の出廷率を高めるため、2012年に改正された刑事訴訟法は証人が出廷しなければならない範囲を明確にし、証人出廷を補助するしくみを確立した。原告・弁護双方が証人の証言に異議があり、かつその証人の証言が案件の罪状認定と量刑に対し重大な影響をもつ場合、証人は出廷すべきであるとした。証言任務履行のために証人が支出した交通、食事・宿泊などの費用は、国家財政により保障される。証人の勤務先はその給与、ボーナスおよびその他の手当などを減額、あるいは形を変えて減額してはならない。 証人の保護制度を整備する。一部の重大な犯罪案件について、証人、鑑定人、被害者が訴訟中に行う証言が元で、本人あるいはその近親者の安全が脅かされる場合、人民法院、人民検察院、公安機関は証人の個人情報を公開せず、容貌や声を露出しないですむ出廷証言の方式をとるべきであり、特定の人員が証人あるいはその近親者と接触することを禁止し、その身辺および住居に専門の警護を付けるなどの措置をとるべきである。