民主党の菅直人元首相は16日、東京電力福島第1原発事故を巡り、安倍晋三首相が「菅総理の海水注入指示はでっち上げ」と題したメールマガジンを掲載し続けているのは名誉毀損にあたるとして、首相に対して慰謝料など1100万と謝罪を求める訴訟を東京地裁に起こした。菅氏側はメルマガの記事は全く事実にそぐわないものであると主張している。菅氏はまた、「安倍首相が今日に至ってもこの無責任な言動に対し謝罪もせず、一切の対応を拒否しているため、当該のメルマガは依然ネットに掲載されたままになっており、名誉を著しく傷つけるだけでなく、自身の所属する民主党にも悪影響になる」と述べた。
菅氏が時期になって、安倍首相を提訴したのには、熟慮した末の思惑がある。先ずは、7月21日に投開票が行われる参院選だが、今回はインターネットを使った選挙活動、いわゆる「ネット選挙」が解禁された最初の選挙戦となる。選挙には直接参加しないものの、菅氏はネットで繰り広げられる言論が現実の政治に及ぼす影響がいかに大きいかを身をもって感じている。次に菅氏が提訴した相手は与党の党首であり、更には現任の首相であるという点である。現段階では安倍首相率いる自民党が勝利する可能性は高いものの、野党の党首であり、更には元首相の提訴ともなれば、選挙の終盤戦においては無視できない障壁となる。また、菅氏は日本の政界に蔓延する悪質な論争に懸念を示し、選挙の公平性を損なうと指摘している。
菅氏の提訴は我々に注目すべき重要な問題を示してくれている。つまり、日本の政治に関する世論、外交に関する世論はネットを介して広まり、ネット選挙が始まることで、日本の政治に根本的な変化が起ころうとしているということである。SNSなどの新たなメディアの利用に長けた人々は、ネット上で暴言を吐いたり、中傷したりすることを好む。デマを流して政治家を中傷するような発言は往々にして絶賛され、注目を集める。その一方で、穏健な意見やおとなしい発言がネットで注目を集めることは難しく、ネット政治では黙殺されることが多い。
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年7月19日