安倍首相や維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)、民主党の海江田万里代表はこの2つのパターンの典型的なタイプであると言える。
日本の政界や世論では「ネット発信力」という新しい言葉が流行っている。数千万のブログや数億件のツイッターなどによる発言が氾濫している日本のネットにおいて、上述した3名の政治家の発信力は強いのか弱いのか、その差はどれほどあるのだろうか。フォロワーの数で見ると、橋下氏がだんとつのトップであり、ツイッターのフォロワー数は112万人に上る。次いで安倍首相が27万人、海江田氏に至っては、フェイスブックのフォロワーはわずか541人である。7月上旬に『朝日新聞』が行ったインターネット調査によると、ネット上での発信力がある主要政党の代表として、39%の人が安倍首相と答え、橋下氏を挙げた人は26%、海江田氏はわずか3%だった。ネット利用の長さや発信の頻度から見ると、橋下氏が最も積極的で、2008年にブログを初めてから、1日で発信したコメントは多いときで100件を上回っている。安倍首相は就任以来、首相官邸と個人のフェイスブックで情報を発信し続けており、平均して1日あたり1.8回投稿している。この3名の中では海江田氏が最も遅れを取っており、2013年6月3日に初めてブログを開設し、ブログでは1週間に四字熟語を一つ投稿し、自身が筆を走られせた「浩然之気」の写真もアップされている。そのアナログぶりから、ネットでは「毛筆派」と揶揄されている。海江田氏に比べ、安倍首相や橋下氏は「ネット派」であり、ブログはより強気なスタイルである。橋下氏のブログでは頻繁に、「バカたれ記者」や「低レベルな新聞」などの攻撃的なコメントが見受けられる。これには安倍首相も負けてはおらず、自分を批判したテレビの司会者や新聞記者、更には一緒に仕事をした外交官までも名指しで批判している。そして、相手が謝罪すると、今度は「ネットの勝利」などと高らかに宣言するのである。
実際のところ、インターネットは確かに安倍首相の今日の「勝利」をもたらしたと言える。報道によると、2012年8月10日、当時の韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領が竹島に上陸したことについて、安倍首相はフェイスブックに批判するコメントを投稿し、半日で2万以上の「いいね!」が付いた。この反響の大きさが励みとなり、当時、一度は政権を投げ出し、総裁選に再び挑戦する踏ん切りがつかなかった安倍首相は再び、政界に戻ってくることを決心したのである。
日本のこの度の参院選がネット選挙解禁後初の選挙となることについて、これは日本の政治メディアにおける規制の開放であり、新たな自由主義に向けた改革であると見ることができる。各政党、各党首、各候補者のネット発信力の差は既に歴然としており、ネットでの勝利が即ち実際の選挙結果に繋がる。しかし、安倍首相や橋下氏のようなネットの「勝ち組」が、日本の世論の横暴で悪質な部分を挑発しており、そのような状態が日本の国力低下を助長し、外交を困難な局面に陥れている。国民の被害者意識を増長し、その被害者意識こそが「既得権益の打破」「中国へのけん制」「朝鮮への制裁」などの強硬な世論を生む元凶となっている。今、日本ではネット選挙が既に正式にスタートし、我々もまた、これらの不愉快なバーチャルリアリティに直面せざるを得ないのである。
(作者:中国社会科学院日本研究所副研究員・金嬴)
「中国網日本語版(チャイナネット)」 2013年7月19日