国際法によると、島礁の海洋権益の主体は、島礁が属する国であり、島礁そのものではない。すべての海洋権益が国家と明確に関連付けられている。国連海洋法条約(以下、同条約)は領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚の制度を規範化した際に、これらの海洋権益を関連する海域の「沿海国」に明確に付与した。国家主権から逸脱し、先にどの国が「沿海国」であるかを決定せず、島礁の地位と権利の問題だけを空虚に論じても何の意義もない。これは国家間の真の係争にはなりえず、国際法的にもそのような先例はない。また低潮高地が領土とされるかも、一つの領土・主権問題だ。先ほど言及したように、主権問題は同条約の調整範囲内になく、自ずと同条約の解釈と適用を受ける問題でもない。そのため客観的に論じて、島礁の法的地位とその海洋権益は、主権問題と切り離せない。
フィリピンによる仲裁の申し立てと、中比の領海線の間には、切り離せない関係がある。国際法によると、島礁の法的地位とその海洋権益の確定は、領海線と切り離すことはできない。前者は領海線に関する事項だ。しかし仲裁裁判所はフィリピンの申し立てが、中国による2006年の声明の排除範囲内にないことを証明するため、珍しくもこの両者を切り離すことができると称した。この「切り離し」の手法は、普遍的な国際法の慣例に合致しないばかりか、この仲裁裁判所の2名の仲裁人が、これまでの学術論文の中で示してきた観点とも一致しない。2名の仲裁人はこれまで、島礁の法的地位およびその海洋権益は、領海線と互いに関連するとしていた。今回その立場を急に変えたが、これには信頼できる説明が必要だろう。
多くの証拠により、フィリピンによる南中国海の仲裁の真の目的が、中国の南沙諸島に対する領有権を否定し、中国の南沙島礁を違法に盗みとった行為を合法化することにあることが明らかになっている。ここで一つの例をあげよう。2013年12月23日、つまりフィリピンが仲裁手続きを開始した翌日、フィリピン外務省は仲裁手続きに関する回答文を発表した。その中で本件の目的を「わが国の領土と海洋の保護」と明記しており、「わが国の主権を放棄してはならない」と呼びかけていた。フィリピンには他にもこのような表現が多くある。仲裁裁判所を前にして、フィリピンは申し立てに技術的な包装を施し、主権という言葉に直接言及していないように見せている。しかし物の分かった人、専門家であれば、これが申し立ての技巧に過ぎず、公明正大でなければ、賢明でもないことを一目で見抜くことができる。フィリピンは自国の真の意図を露骨に口にしているが、仲裁裁判所はなぜ聞かざるを決め込み、さらにフィリピンのために隠そうとしているのだろうか?